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校長室

熊本高校の教育


   今我が国の教育は、「画一と受け身から自立と創造へ」という、教育の在り方自体の大きな方向転換を図っています。それは、内外ともに極めて変化の激しい、先行き不透明な新しい時代となる21世紀においては、自らの力で新しい時代を切り拓く、心豊かでたくましい人間の育成を目指すことが必要だという理由からですが、これこそ正に本校が、創立以来努力してきた「士君子」たるの修養を目標として、徳性・智能・体力ともにすぐれた人物の養成を図ってきたことや、自主自立の精神の涵養に重きを置いてきたことと一致するものです。                                                                               本校は、百年の校史とともに、生徒たちを見守り続けた正門の石の門柱の教え「たとえ世に知られなくても、社会の礎たれ」と、「士君子たれ」の建学の精神を常に掲げ、勉強だけでなく部活動や生徒会活動に情熱を注ぐ生徒を中心とした伝統ある学園です。 

 

ようこそ校長室へ

歴代の校長の写真(初代~17代)  
 歴代の校長の写真   (写真下)校旗の棹
 かつて熊本城の武器庫にあったといわれる同田貫の皆朱の槍

  (左)大江原頭 開校当時の本校俯瞰図

 (中)校賦 落合 為誠作

 (右)校訓「士君子」第一回卒斎藤宗績 書

 (右奥)野田寛初代校長 筆 「六事十二字」


(左)大江原頭 開校当時の本校俯瞰図 (中)校賦 落合 為誠作(右)校訓「士君子」第一回卒斎藤宗績 書 (右奥)野田寛初代校長 筆 「六事十二字」 

校長室より

ご挨拶 

IMG_3112.JPG    このたびの定期異動により、熊本県立熊本高等学校校長を拝命いたしました和久田恭生でございます。

 昨年度までは、熊本県教育庁教育総務局学校人事課審議員として、県立学校全体の人事管理を中心とする教育行政に携わっておりました。

 微力ではありますが、これまでの経験を最大限に発揮し、全力を尽くして校長職を務める所存であります。

 本年、創立115年を迎える歴史と伝統と実績のある本校に勤務できますことは、私にとりまして身の引き締まる思いでありますとともに、大変光栄なことでございます。

 先ずは、着任の御挨拶を申し上げます。

 

    平成27年4月7日

 熊本県立熊本高等学校長   和久田 恭生

 

平成27年度入学式(4月8日)


 

式  辞

人も自然も厳しい冬をくぐりぬけ、待ち望んでいた春を迎えることができました。本日ここに、多数の御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、「平成二十七年度 熊本県立熊本高等学校入学式」を盛大に挙行できますことは、この上ない喜びであり、深く感謝申し上げます。

ただいま、入学を許可いたしました四〇六名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。みなさんの入学を心から歓迎いたします。

熊本高校は、今年で創立百十五年を迎える、歴史と伝統のある学校で、四万人を超える卒業生の方々は、我が国はもとより、世界的に活躍しておられ、輝かしい実績のある日本を代表する高校であります。

さて、新入生の皆さんに、次の二つのことを期待しておきます。

まず、一点目は、「建学の精神」を身に付け、これからの人生の拠り所にしてほしいということです。本校は、開校以来、野田寛初代校長によって示された建学の精神である「士君子」たるの修養を目標とし、徳性、知能、体力ともに優れた人格の完成を目指しています。「士君子」とは、校訓の中に、「礼節を旨とし、誠実にして謙虚、善をなすために勇に、心身を錬磨し、艱苦に耐えて、日に新たに勉学に努め、有為の人材として大成を期す」と示されています。このことを、別の言い方をすれば、「国際社会にリーダーシップを発揮する能力と異質な文化に対する柔軟な心を備え、いついかなる時も品位ある態度を堅持することのできる人間」ということです。

これは、本校の百十四年に及ぶ歴史の中で一貫して変わることのない、不易の教育理念であります。この建学の精神を備えた人間像を求めて生きていくことを、熊本高校の生徒の一員となった新入生の皆さんに強く希望します。

自分の言動が、誠実であるか、謙虚であるか、善をなすために勇であるか、心身を鍛えているか、日々新たに勉学に努めているか、有為の人材となろうとしているかと、自問してほしいと思います。

二点目は、これからの時代に求められている力を身に付けてほしいということです。我が国の目指すべき社会像は、「優れた知識やアイディアの積極的活用によって発展するとともに、人が人を支える安定的な成長を果たす成熟社会」と言われています。この成熟社会において求められる能力は、総合的かつ持続的な学修経験に基づく創造力と構想力に加え、人間としての自らの責務を果たし、他者に配慮しながらチームワークとリーダーシップを発揮して社会的責任を担いうる、倫理的、社会的能力などがあります。これらが、今の時代の「士君子」に求められている能力であると私は、考えます。

我が国においては、急速に進展するグローバル化、少子高齢化による人口構造の変化、エネルギーや資源、食料等の供給問題、地域間の格差の広がりなどの問題が急速に浮上している中で、社会の仕組みが大きく変容し、これまでの価値観が根本的に見直されようとしています。このような時代に生き、社会に貢献していくには、想定外の事態に遭遇したときに、そこに存在する問題を発見し、それを解決するための道筋を見定める能力が求められています。これらの能力を身に付けた「士君子」を目指してほしいと期待します。  

最後になりましたが、保護者の皆様には、お子様の御入学、誠におめでとうございます。

本日からお預かり致します四〇六名の生徒の皆さん一人一人の成長と夢の実現並びに「士君子」の育成に向けて、私たち本校教職員は学校の総力を挙げて取り組んで参ります。

どうか、保護者の皆様におかれましては、本校の教育方針を御理解いただきまして、これから始まります本校の教育活動に、御支援と御協力を賜りますようお願い致します。

結びに、夢と希望に満ちた新入生の皆さん一人一人にとりまして、本日が「士君子」の修養の始まりの日となりますことを祈念して、式辞と致します。

  平成二十七年四月八日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度7月終業式(7月17日)


 

式   辞

・みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。

・表彰式では、多くの生徒に表彰状を渡すことができました。すでに全国大会への出場が決定していますのは、全国総合文化祭に将棋の中村くん・水田くん・白井くん、囲碁の橋本くん・上村さん、放送部の池邊さん、百人一首部の伊藤さん・上野さん、それから全国囲碁選手権に出場する橋本くん、全国ディベート甲子園に出場するディベート部の高橋さん・片山くん・田原くん・永井くんの延べ13名です。本校の代表として、力を発揮して、頑張ってきてください。

さて、県高校総体や高校総文祭が終わって1か月半以上経ちました。私もいくつかの競技や発表を見にいきましたが、高校総体を見て私は君たちにもっと試合をさせたかった、熊高生の頑張る姿を多くの人に見てもらいたかったと思いました。既に多くの部活動では3年生が引退し、2年生に引き継がれています。3年生にとっては、力が出せずに終わった人もいると思いますが、部活動で試合に勝つという目標は達成できなかったとしても、部活動をした目的は達成できた人も沢山いたと思います。

・そこで、今日話したいことの一つ目は、勉強でも部活動でも「目標を達成するには、一つ一つの積み重ねしかない」ということです。「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」と言った人(トーマス・エジソン)がいます。努力をすることとそれを続けることが大事なことであると思います。急に力が付くことはあり得ないことで、時間をかけて積み上げなければ力はつかないのだと思います。

努力をするということは、川の中に石を一つずつ投げ入れて、石が水面に現れるまで積み重ねるようなものではないかと私は思います。中々、水面まで石は積み上がってこないけど、諦めずに続けることでいつかは沢山の石が基礎を作り、水面から石が見えてくる。一人一人、石の積み方は違うので、基礎を広く作って表面に見える場合もあれば、効率的に積み上げることができる場合もあるのだと思います。しっかりした基礎が出来上がれば、ある時期からは、力がついて行くことを一日一日実感できる時がきます。そこまで勉強や部活動で努力を続けてほしいと思います。

・二つ目は、この夏休みに「自分の経験の幅を広げてほしい」ということです。そのための一つの手段は、海外に行くことだと思います。海外に行くことでこれまで知らなかったことを経験し、自分の幅が広がるのだと思います。

この夏休み中に本校生で、海外に留学等で行く生徒は、

イートンサマースクールで16日間、イギリスに32名、

トビタテ!留学JAPANで17日間、オーストリアに1名、

モンタナ大学高校生派遣で16日間、アメリカに2名、

グローバルジュニアドリーム事業で5日間、台湾へ1人、

桂林市交流事業で6日間、中国へ1人の合計37人います。

昨年、本校でドナ・ウェルトンさんという在日アメリカ大使館の外交官を務めている方が講演されました。キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使に次ぐポストで政務担当公使をされています。ウェルトンさんは、今から42年前の1973年に本校に1年間、留学生として在籍されました。今年の6月27日にはドナ・ウェルトンさんが東京江原会で話をされ、私も聞かせていただきました。その話の中で「外交官として大切なことは、すべて熊高の1年間で学んだ」と言われました。その大切なこととは、「①共感すること、②謙虚であること、③人の話をよく聞くこと、④間違いを恐れないこと、⑤予想しなかったことも受け入れること」の五つのことを挙げて説明されました。1年間の留学で、「自分がどんな人間なのかを知ることができた」、「自分の人生を自分らしく生きることから始めようと思った」ということを言われました。

・話は少し変わりますが、私は本校生を見ていて、素晴らしいと思うところがあります。それは、さまざまな企画、イベントに対して、君たちが自分の興味や関心のあるものに積極的に参加していることです。例えば、これまで2回放課後に行われた上野健爾先生の数学の講演です。5月は整数論に関する講義でしたが、会議室に満員になるくらいの生徒の出席がありました。また、今年度初めて企画して、夏休み中に開催します農業経営セミナーに2日間で延べ70人の1,2年生が参加を希望しています。これからもいろいろなことに関心を持ち、積極的に参加してください。強制ではなく、希望で沢山の生徒が参加して、自分の経験の幅を広げるようとしていることは、素晴らしいことであると思います。

・少し、唐突ですが、皆さんは夏の青空にくっきりと力強く湧き上がる積乱雲の入道雲を見て、どのように感じますか?ある人は、この入道雲を見て「夏雲の湧きてさだまる心あり」という俳句を詠んだ人がいます。その人は、熊本市出身の中村汀女という俳人です。奇しくも明治33年(1900年)の生れですので、本校創立の年と同じです。その方が83歳の時に、母校の第一高校の創立80周年を記念して建立された句碑除幕式で披露された俳句です。その時の御本人が述べられた言葉では、「白い湧きたつような夏の雲を見ながら、(今は東京に住んでいますが、)私の心の一隅には熊本の夏雲があります。あー、もう夏になったという気持ちの中に、何か心に期するものがあるはずだ、思い立つことは実行することだ、そういう気持ちが湧くという気持ちでしょうか」と話をされたそうです。夏の入道雲を見ていると、自分の心の中に何か確かな志のような、強い決心のようなものが湧き上がってくるのを感じる。この夏、自分の将来の目標を胸に秘め、決意を新たにしている熊高生に送りたい句であると思い紹介をしました。夏休み中に、入道雲を見たら、少しこの句のことを思い起こしてください。これからの夏休みの暑い時期に自分自身の心と体と頭を鍛えることを決意してそれを続けてほしいと思います。それが、川の中に積み重なった石のように、努力の成果として現れる時期が近い将来必ずやってきます。「夏雲の 湧きてさだまる 心あり」です。

以上で、私からの話を終わります。

平成二十七年七月十七日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度9月始業式校長式辞(平成27年9月1日)


式   辞

 ・みなさん、おはようございます。始業式にあたり、私から話をさせていただきます。

 先週は、台風15号が熊本を通過し、強風で本校もガラスが割れたり、樹木が折れたり少し被害を受けました。正門脇の桜の大木が半分折れてしまいましたが、残された部分は大丈夫ということでした。台風が通過した翌日の課外後に1,2年生に片付けてもらい、その後、体育祭応援団リーダーや野球部をはじめ一部の部活動で折れた木々を綺麗に運んでくれて、ありがとうございました。

 ・夏休みが昨日で終わりましたが、どうだったでしょうか? 終業式のときに、『夏雲や 湧きてさだまる 心あり』という句を紹介しましたが、自分で今、やるべきことを決めてそれを実行に移し、努力を続けることができていることを期待します。一方では、夏休みを充実させることができなかった人もいると思います。その人は、過去を変えることはできませんので、これから夏休みの分を埋めるくらい努力していくしか方法はないと思います。挽回を期待しています。

 ・さて、この夏休み中に、青森県にお住まいで、私は全く存じ上げない方から熊本高校校長宛てということで一通の手紙が届きました。開封してみたところ、「7月のお盆で熊本市内の実家に帰省した折に、熊本高校の生徒の方に助けられたので、感謝の手紙を送りました。」という書き出しでした。その時の状況としては、熊本市内のあるところで、自分の財布を落としてしまい、その財布の中には、法事のお布施、1週間の滞在費用、キャッシュカード、自動車免許証、保険証、青森に戻るときの飛行機チケットと新幹線の切符など大切なものばかり入れていたそうです。財布を失くしたことに気がついたのが翌日の朝で、すぐに落としたところに行ってみたそうです。そうしたら受付に届けられていて、中身もすべてそのままであることを確認して、その場で思わず、「良かった! ありがとうございます!」と叫ばれたそうです。拾ったものを届けるという当たり前のことを自然に行動できることがとても新鮮に感じられたとのことでした。拾い主として受付に携帯電話の番号を届けてあったので、すぐに電話をされたところ、電話の声が実に爽やかで、その時、高校生ということで高校名を聞いたところ、熊本高校ということで校長の私に手紙を書いたということです。手紙にはさらに、「熊本高校には、道徳心をしっかりと土台にした、正直で心優しい生徒さん達が多いことでしょう。」「徳育、知育、体育。古い言葉かも知れませんが、熊本高校には三拍子が揃っていることを実感しました。」と書いてありました。

その手紙を読んで、財布を拾って届けてくれた生徒に校長室に来てもらいました。実際は、二人でそこへ行っていて、二人で届けたということでした。当人は「当り前のことをしただけです。」という返事でした。みんなに紹介すると言ったら、匿名でということでしたので、このような形で紹介しておきます。

・また、別の方からは、「つい、嬉しかったので、突然、神戸から手紙をお出しする失礼をお許しください。」という書き出しの手紙も受け取りました。内容は、自分の妻の祖父が済々黌から熊中1回生として移り、生徒たちで運んだという本校の正門になっている熊本城の橋の柱を見たいと思い本校に立ち寄られたそうです。その折りに、出会ったハンドボール部の生徒と先生が、見知らぬ老夫婦に、笑顔で優しく、親切に応対してくれて感謝しますという内容でした。「これぞ100年を越す『士君子』の心が今に香る姿ですね。」「美しく豊かな自然、新鮮でおいしい食物、本物の温泉に加えて、熊高の生徒さんと先生との出会いで、好きな熊本がさらに大好きになりました。今後とも訪熊を増やすつもりです。」と手紙は結ばれていました。

この二つの手紙を読んで、私もとても嬉しくなりました。

・ところで、数年前の卒業式で、「熊高はよく、自由な学校だと言われます。勉強ばかりして、好き勝手にやっていると思われてしまうのがとても悲しいです。熊高の自由とは、そのような卑怯なものではなく、もっと気高いものだと私は信じています。」と答辞を述べた卒業生がいました。

勉強以外のことはきちんとできないのではないかという先入観があるとしても、それは全くの誤解で、私は本校生のことをもっと知って理解してほしいと思っています。学校としても、機会あるごとに本校生の実際の姿を伝えていきたいと思います。

 ・今月は、文化祭と体育祭があります。本校に多くの方が来校されます。実際に皆さんの姿を間近かに見てもらえる機会ですので、君たち一人一人が熊高生の代表として、いろいろな面で多彩な才能があって、溌剌としている熊高生の姿を見せてほしいと思います。

文化祭と体育祭に向けて、多くの時間と労力を費やして準備や練習をしていることと思います。その日のために、みんなで協力して一つのことを作り上げることは、とても素晴らしいことです。後で振り返ると、高校時代で一番の思い出になっているかも知れません。

しかし、途中の段階は順調にいかず、中々思い通りにならないことも少なくないと思います。皆さんは、「レジリエンス(resilience)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? レジリエンスとは、もともと環境学で生態系の環境変化に対する「復元力」を表す言葉として使われていましたが、今では現代心理学で人の精神的な回復力を示す言葉として使われ始めています。「困難な状況に耐え、素早く回復する能力」とか、「逆境やトラブル、強いストレスに直面したときに、適応する力」と説明されています。レジリエンスによって、「①現実を直視し、状況を正確に理解する。②創造的にしなやかに対応策を考える。③合理的な思考で行動し、逞しさを持って逆境を乗り越える。④辛い体験から価値ある何かを学び、その度に成長する。」というプロセスを辿るのだそうです。レジリエンスのある強く、逞しく、しなやかな心は誰にでもいつからでも学ぶことができると言われています。文化祭や体育祭の準備、練習においても、このレジリエンスを発揮してほしいと思っています。

 きっと、多くの来校者に感動を与え、熊高生の素晴らしさを感じていただける文化祭、体育祭にできるものと期待しています。皆さんの健闘を願い、9月始業式の式辞とします。

 平成二十七年九月一日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度12月終業式校長式辞(平成27年12月24日)


式   辞

 ・ みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。

 今、表彰式を行いましたが、二学期は部活動では2年生と1年生で活動し、それぞれ成果をあげてくれていることと思います。全国大会へはボート部の東坂君とESS部が英語ディベートで出場します。九州大会へは水球・水泳部の村上君、弓道部、放送部、吹奏楽部が出場します。

 ・ 12月の終業式は、今年1年の締め括りになります。今年1年は生徒の皆さんにとってどのような1年だったでしょうか? 二学期の学校行事では、体育祭、文化祭で君たちから多くの感動と熊高生の力を感じることができ、清々しい思いをすることができました。

 それから、12月には1年生の修学旅行がありました。本校では、修学旅行期間中毎日短歌や俳句を作り旅行の記録としていますが、1室の馬場君の作品を紹介したいと思います。それは、「風とともに 身に沁む坊主の はなしかな 命運ぶは 我が手のみとぞ」という短歌です。これは、初日に訪れた薬師寺のお坊さんの法話についての短歌です。その話は、「運命」いう漢字は、命を運ぶとなっていて、命を運ぶ車の運転手は自分自身であるという話をされました。手を動かすのも自分の意思で動かしている。それを、馬場君は「命運ぶは 我が手のみとぞ」と上手にまとめていると思います。いやいや生きるのならば、誰も自分の運命は変えてはくれないという話でした。人間の運命は将来に亘って予め決められているものではなく、自分自身で作り出していくことができるということだと思います。

 与えられた運命に埋没して流され、翻弄される生き方が「宿命」であるならば、自らの使命を自覚し、その使命を全うするために自らの手で運命を変えていこうとする力強さ、積極的な生き方が命を役立てるという意味で「立命」と言われています。

 ・ さて、明日から冬休みです。課外は12月28日まではありますが、これからの冬休みをどのように過ごそうと思っていますか? 年末となると何となく慌ただしく時間が過ぎていく感覚になりがちですが、同じ1日は1日です。特に3年生にとってはセンター試験まで23日となりました。「現役生は、ここから成績が伸びる。最後の一日まで伸びる。」と言われています。それは、なぜでしょうか? 私が思うに、現役生が伸びる理由は、「最後まで、自分の可能性を信じることができるから」、そして、「一緒に頑張っている沢山の仲間がいるから」だと思います。日に日に近づく本番を前に不安を感じないという人はそうはいないと思います。慌てず、焦らず、諦めずに自分の力を信じて頑張り抜けるかどうかです。一日一日を大切にしてほしいと思います。大晦日であろうが正月であろうが受験生の一日を送ってほしいと思います。3年生に限らず、人生の中で一回くらいは、勉強しながら年が明けても良いのではないかと私は思っています。私も高校の時の一度だけは、勉強しながら、ラジオでベートーベンの交響曲第九番の「歓喜の歌」の合唱を聞いて年が明け、そのまま初詣に行ってから、眠ったという記憶があります。

 ・ 話は変わりますが、10月8日に本校の前の通りで自転車同士の接触事故がありました。他校の自転車通学の生徒はバランスを崩して倒れて怪我をしたことで警察に相談されており、その時の状況を確認する必要があるため、全校生徒に再三呼びかけましたが、本校の生徒から申し出はなく、どんな状況で起こった事故だったのか確認ができていません。相手の生徒は本校生徒を呼び止め、ノートにクラスと名前を書かせたものが、嘘の内容だったということが判りました。結果的には人を騙すということになってしまっています。本校生としてこのような対応は残念ですので、どんな状況だったのかを詳しく聞きたいということで呼びかけた訳です。相手からの情報だけの一方的な話だけでしたので、本校生の状況を聞きたかったと思います。本校生徒の中に、衝突した事故を目撃した本校生も複数いました。今回のことは本校生らしからぬ行為ではないかと思っています。本校生に求めているのは、誠実な対応であり、校訓には「過ちを改むるに敏に」とあります。これ以上、君たちに呼びかけて今回の事故のことを聞くことはしませんが、今後は君たちそれぞれが事故が起こったときの対処の仕方も身に付けてほしいと思っています。

 また、本校生も事故に巻き込まれ、怪我を負う事故も多発していて、車の運転手の前方不注意であわや命に関わるような大事故になりそうな事故も起こっています。交通ルールを守り、十分注意して登下校してください。

 ・ ところで、あと一つだけ話ておきたいことがあります。公職選挙法が6月に改正になり、来年6月から満18歳の高校生も選挙権が与えられることになりました。そのため、来年7月の参議院議員選挙から高校生の中にも投票することができる生徒が出てきます。一人一人が主体的に候補者を選んで投票することは、民主政治を実現させるためにとても重要なことです。今年4月の熊本市会議員選挙では、二人の候補者の得票が4515票で同数になったということがありました。18歳になったら、一票の持つ意味の重さを受け止め、主権者としての責任を果たすためにも、選挙には必ず行くようにしてください。一方、「選挙運動」、「政治的活動」、「投票運動」については、法律上の様々な規定があります。例えば、満18歳以上の人は選挙運動を行うことができますが、満18歳未満の人は選挙運動はできません。認識不足による違法行為等を犯すことがないよう、様々な機会を通じて、選挙に関する法的な決まりについても学習なければなりません。早速、今日のLHRでは一人一人にテキストを配り担任の先生から説明をしてもらう時間を確保しています。

 ・ 私からの話は以上です。それでは、充実した冬休みとなることを期待しています。

 平成二十七年十二月二十四日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度 1月始業式校長式辞(平成28年1月8日)


 

式   辞

 ・みなさん、おはようございます。それから、明けましておめでとうございます。みなさんはどのように新年を迎えられたでしょうか? 今年の元日は天気が良く、初日の出を拝める可能性が高いということでしたので、私は少し早起きして息子と一緒に阿蘇の大観峰に行き、初日の出を待ちました。雲海が広がる中で7時20分ごろから山際が輝き始め、見る見るうちに昇り始め、眩いばかりに輝く朝陽を見ることができました。

 ・さて、今年は申年ですが、ネットで調べると、申年は「十二支の9番目で、西暦年を12で割ったときに余りがでない年」という説明が載っていました。2016が12で割り切れるのかということですが、2016は偶数なので2で割り切れて、半分の1008も偶数なので2で割り切れるので、2016は4で割り切れる数です。また、各位の数字の和は2+0+1+6=9なので3で割り切れます。従って、2016は4でも3でも割り切れるから最小公倍数の12で割り切れるので、今年は申年ということになります。十干十二支では、十干の3番目の丙と十二支の申の組合せで「丙申(ひのえさる)」の年になります。「丙」は形が明らかになっていく頃で、「申」は果実が成熟して固まっていく成長段階を表すそうです。そういう意味では、今年はこれまで頑張ってきた人の努力が形になる年と言えます。みなさんの1年がそのような1年になればと思っています。

 

・今年はどんなことがある年なのかと見てみますと、マイナンバー制度の開始年であるとか、選挙年齢の引き下げが始まる年です。熊本に関係するものとしては、文豪 夏目漱石が熊本の地に降り立ってから今年で丁度120年であり、没後から100年でもあり、来年が生誕150年ということで漱石記念年として今年は多くのイベントが県内で予定されています。夏目漱石は明治29年(1896年)4月13日に29歳の若さで熊本に来て、4年3か月の間、第五高等学校の英語教師をしています。丁度、本校創立時の1900年7月まで熊本にいて、その後に2年間の英国留学をしています。夏目漱石は115年前の本校創立直後の様子をどのように見ておられたのでしょうか、私としては興味深いところです

 

・ここで、新年にあたり、私からあと一つだけ話をさせていただきます。皆さんは本校の玄関を入ったところに、書の掛け軸があるのを知っていますか? 昨年の文化祭の時に棚の配置を変えて、廊下を通るときに見れる位置に動かして設置しています。それは、本校初代校長の野田寛先生が書かれた書の掛け軸です。書かれている言葉は、

 「君子の学は必ず日に新たにして、日に新たなる者は日に進むなり。日に新たならざる者は必ず日に退き、未だ進まずして退かざる者は有らざるなり」

という言葉です。これは、1176年に刊行された朱子学の入門書である『近思録』に書かれている言葉です。その意味は、「君子の学問とは、日々反省して改め刷新していくものである。それを日々励行できる者は着実に進歩向上するが、一方でそうできない者は日々衰退の一途を辿るのである。人というものは必ずこのどちらかなのであって、進歩も衰退もしない者など未だかつていたことはない。」ということです。人は、進歩するか衰退するか、それ以外はないという中途半端は許されないところに厳しさを感じます。

また、この言葉の語源は、紀元前1700年頃に聖人といわれた殷(いん)の湯王(とうおう)が、「まことに日に新たに、日々に新たに、また日に新たなり」という言葉を毎朝使う洗面の器に刻みつけておいたと伝えられています。湯王は寸陰を惜しんで朝夕これを眺め、自ら修養の鑑戒として、常に覚悟を新たにして毎日取り組んだと言われています。今日は苦悩や悲しみに傷ついても、そこでへこたれずに耐えて、明日を迎える。そこに新しい一日が始まる。そして、その一日を全力で頑張ることで、そこから新たなる希望や活力が湧いてくるに違いないという思いが込められた大変力強い言葉だと思います。

 ・私自身も、本校の玄関にある野田寛先生の書を毎日見ながら、今年の一日一日を過ごしていこうと思っています。「日々新た」という言葉を皆さんに紹介して、1月始業式の式辞とします。

 

 平成二十八年一月八日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度 卒業式校長式辞(平成28年3月1日)


式  辞

早春の陽を浴びて校庭の桜の蕾が膨らみ始め、春の訪れを待っている花や木の命の鼓動が、聞こえてくるような季節となりました。   

本日ここに熊本県知事 蒲島郁夫 様をはじめ、県議会、歴代校長、江原会、育友会、県教育委員会などから、多数のご来賓、並びに保護者の皆様のご出席のもと、第六十八回熊本県立熊本高等学校卒業式をこのように盛大に挙行できますことに、心から感謝申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与しました397人の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。皆さんがこれから出ていく社会は、急激な少子高齢化が進行し、グローバル化の進展に伴う国際競争が激化しており、我が国が将来にわたり成長・発展し、一人一人の豊かな人生を実現するためには、新たな価値を創造し国際的に活躍できる人材や、多様な文化と価値観を受容し共生していくことができる人材が求められています。これからの時代を皆さんはどう生きていけばいいのでしょうか。

これからの時代は、人と人との繋がりや、人と自然との調和が一層求められます。皆さんは、生まれ育った郷土や国を愛し、自己というものをしっかりと確立したうえで、国や民族の価値観の違いを越えた地球的な視野を持つことが必要です。そして、真心と、協力して事を成すという姿勢を基に、困難な局面であっても希望を持ち続けてほしいと願っています。

本校の教育理念は、「士君子」を育成することにあります。これまでの本校での三年間は、自主自立を達成するための基礎づくりの期間であったと同時に、将来の自己実現に向けて、自己を発見し、自己を理解し、自己を成長させるための期間でした。士君子の理念は社会がどのように変化しようとも、変わることがない不易であると思っています。

さて、一月の予餞会で、三年担当学年団から三年生への餞の言葉として「大切なものは目には見えない」というサンテグジュペリが書いた『星の王子さま』の言葉が贈られました。サンテグジュペリは、本校創立と同じ1900年生まれのフランスの郵便飛行士であり、小説家です。『人間の土地』という本では、「たとえ、どんなに小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる。そのときはじめて、ぼくらは平和に生きることができる。」と書かれており、「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる。」と結ばれています。「完成された人間は、精神の風が土地の上を吹いた時に生まれる。同一であることの方がリスクだ。オリジナルであれ。本然を全うすれば人間ははじめて人間らしくなる。高貴であれる。高貴さに伴う義務というノブレスオブリージュの精神が息づいている」ということを伝えています。

これは、「士君子」に求められていることでもあると思います。

結びに、卒業という人生の節目となる今日、皆さんを支えてくださった保護者をはじめとする方々への感謝の気持ちを忘れることなく、また、ふるさと熊本を誇りとして、未来を誠実に切り拓いてください。更に、これからも猛烈に学んでほしいと思っています。今年度のスローガンである「誠実、感謝、猛勉強」を卒業生の皆さんに餞の言葉として贈り、皆さんのご健康とご活躍を祈念して、式辞と致します。

 平成二十八年三月一日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成27年度3月終業式校長式辞(平成28年3月24日)


 

式   辞

・ みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。

  • 3月の終業式は、今年度の締め括りになります。この1年間は、皆さんにとってどのような1年だったでしょうか? 長い1年だったでしょうか、それとも短く感じる1年だったでしょうか? 1年を長く感じるか短く感じるかは、経験による処理速度向上説というものがあり、これまで経験したことがあることは速く処理できるため短く感じるので、「日常生活以外の特別な出来事が多いと、時間は長く感じられる」と言われています。今年度1年間に、以前とは違ったたくさんの経験をした人にとっては1年が長く感じられ、感動することが多かったり、逆に苦しいことが起こったりした場合も、1年は長いと感じられたことでしょう。この1年間で多くの経験を重ね、自分の力を精一杯発揮することができたでしょうか? また、新しい年度への決意はできているでしょうか?

  •  ところで、2月末には、本校の昨年3月の卒業生が殺害されるという痛ましい事件が福岡で起こりました。2月29日の卒業式予行を始める前に、亡くなったこの卒業生のご冥福を祈り黙祷を行いました。本当に残念で悲しい事件でした。ただ、この事件後の対応については流石に本校生だと思うことがありました。それは、ブログなどに載せてあるこの卒業生の写真を報道関係者に出さないように、自主的に動いてくれたことです。後輩にあたる君たちにとっては、掛替えのない先輩であった訳で、卒業生のご遺族のことを思うと、ラインやブログの内容、写真などを安易に出すことで誤解を招く印象を与えてしまうことを避けようと考えての行動であったと思います。私のところにも、学校で保管している卒業アルバムを貸してもらえないだろうかと、或るテレビ局からお願いがありました。写真をテレビに出すことで、視聴者に具体的にイメージを伝えることができると言ってきました。私は、個人情報であるだけでなく、ご遺族の気持ちを考えると写真を学校から提供することはできませんと断りました。君たちも、ご遺族の気持ちを考え、亡くなられた卒業生の様々な情報が公表の可否を確認されないまま出されることによって誤解に繋がらないようにと、みんなで協力し、熊高生という固い絆で守ってくれた行動であったと思います。熊高生の自主性の素晴らしさをあらためて感じました。それと同時に、今後このような事件などで皆さん一人一人の命が危険に晒されることがないようにと祈りました。

  •  話は変わりますが、今年度の大学合格の状況が、昨日の熊本大学後期日程合格発表でほぼ出揃いました。例年以上に多くの卒業生が難関大学をはじめとする大学に合格し、自分の進路目標を達成しています。これから最終的に整理をして、皆さんにも伝える機会があると思います。中でも驚くことに、海外の大学に合格した人もいます。しかも複数の大学に合格しているとのことで、今月中に正式な合格通知が本人の手元に届く予定です。グローバルな人材が求められている中で、大学からそれを達成した生徒と言えます。すべての合格が判明してからどの大学に進学するかを決めるということですので、進学先が決定したら、知事や教育長を表敬訪問したいと思っています。また、君たちにも何らかの形で話をしてもらう機会を作りたいと思っていますので、それまで楽しみに待っていてください。

  •  さて、明日から2週間の春休みです。この期間は、来年度に向けた準備をする期間であると思います。今日配付される保健委員会からの「ほけんだより」にも、春休みは休みではなく準備期間であると書いてくれています。皆さんの中には「先憂後楽」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないかと思います。「まず、始めに苦労しなさい。努力しなさい。そうすれば、その苦労や努力が報われ、やがては楽しい人生が送れる」という意味でも使われています。その意味では、4月の始業式までに、心配なことはできるだけ解決し、この春休みを頑張ると、新年度のいいスタートが切れるということです。これからの1年間に待ち受けている出来事を乗り切る気力も求められています。

     一方、先憂後楽の言葉の起源は、北宋の范仲掩(ハンチュウエン)という政治家が、挫折して地方に左遷されてしまい、失意の中で岳陽楼に登って洞庭湖を眺めた時に、その雄大な風景に感動して、政治家は常に国民のことを真っ先に憂えるべきであり、自分自身は後で楽しめばよいことに気づき、『岳陽楼の記』の中で「天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」と著したそうで、それを四字熟語にして「先憂後楽」と言っています。日本三大名園の一つである『岡山・後楽園』は当初、岡山城の後ろにあるので「後園」と呼ばれていたそうですが、「先憂後楽」の精神から「後楽園」と改称されたようです。この先憂後楽という言葉から熊高生に伝えたいのは、前半の意味の自分自身のことで、早いうちに苦労し努力することだけではなく、後半の意味の周りのことや学校全体のことを考えて行動するということが大切であり、それが士君子に求められていることではないかということです。この春休みには、二つの異なる意味での先憂後楽を目指してほしいと思っています。

  •  明日からの春休みが、次年度を充実させるための準備期間となることを期待して、私からの話を終わります。

 平成二十八年三月二十四日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度4月始業式校長式辞(平成28年4月8日)


 

式   辞

・みなさん、おはようございます。平成28年度4月の始業式にあたり、私から話をさせていただきます。春休み中の3月末には、K.S.O.部第7回定期演奏会と第11回吹奏楽部定期演奏会がありました。二つの演奏会に合わせて1,100人を超える来場者があり、素晴らしい演奏と楽しい演出で、吹奏楽部、K.S.O.部で頑張っている生徒たちの姿を見てもらうことができました。また、司会を担当した放送部の生徒も、本校生らしい爽やかさが伝わる司会ぶりであったと思います。春休みが昨日で終わり、いよいよ新しい年度が始まります。皆さん一人一人が今年度にかける意気込みをもって、今日の始業式を迎えていることと思います。

・さて、今年と来年は漱石記念年ということですが、3月23日のある新聞に、夏目漱石が住んでいた頃の熊本の街の姿を伝える貴重な絵画が残っているという記事が載っていました。日本画家の甲斐青萍(せいびょう)氏が描いた「熊本明治街並図屏風」が紹介されていました。その屏風絵には、本校の前身である中学済々黌が、現在の熊本ホテルキャッスルのところにあり、崇城大学市民ホールから熊本城に向かう橋として、下馬橋が熊本城正面入り口に架けられています。この下馬橋は、明治35年に今の御幸橋に架け替えられ、そのときの橋桁は、皆さんが知っている本校の正門の門柱となっています。

・『熊中熊高百年史』によるとこの柱には、明和3年と造られた年が刻まれているとのことです。明和3年は、西暦1766年ということですので、今から丁度250年前になります。本校の門柱のどこかに、明和3年と刻まれていると思いますので、いつか見つけたいと思っています。また、甲斐青萍(せいびょう)氏が描いた絵は、実は今、校長室にも1枚飾ってあります。これは、江原会所有の「熊中校舎俯瞰図」という絵画です。大正末期の託麻が原の大江源頭に建てられた本校木造校舎が描かれています。正門付近の銀杏の木や桜の木々も描かれています。これは本校の当時の様子が描かれた貴重な絵画です。

・次に、本年度のことについて話をしたいと思います。創立116年目を迎える今年度も昨年度に引き続き、「誠実、感謝、猛勉強(猛練習)」を平成28年度のスローガンとします。

校訓の冒頭に「誠実心」が挙げられていまが、「誠実」であることは、士君子になるための必要条件であると私は思っています。自分自身の言動が、誠実であるかどうか常に自分自身で確認してほしいと思っています。

二点目の「感謝」については、感謝できるということはその状況をプラス思考で前向きに受け止められるということですし、平穏であることの有難さを感じることも感謝の気持ちに繋がります。感謝の反対が、不満と思いますが、同じ状態であっても、不満と受け止めずに、感謝を優先して感じることが、結果として大きな違いになり、多大な幸福感につながると思います。

最後の「猛勉強(猛練習)」については、限られた時間をいかに大事に使うかということです。日頃からこれは何分間でやってしまうというタイムプレッシャーを自分に課して、集中して取り組むことが、社会人となってからも必要です。猛練習についても、部活動でこれから1年生が入部して、3学年揃って練習できる時間も限られています。密度の高い練習を目指してください。

更に、どのように学ぶのかということについてですが、先日、米マイクロソフト社が作った人工知能「Tay」がツイッターでデビューしてから、数時間後に差別的な発言や暴力的な発言が多くなり、停止したというニュースがありました。さらに、米ハンソン・ロボティクスが開発した人工知能搭載ロボット「Sophia」が、「人類を滅亡させる」と発言し、にっこりと笑顔を見せたというニュースもありました。君たちに伝えたいことは、単に知識としてだけを学ぶことの恐ろしさです。基礎基本の考えを学ぶと共に、どのように応用するべきかという判断力を養う必要があります。また、少し難しいことであっても諦めずに、チャレンジを続けることも大切なことです。努力は必ずしも直ぐに報われるとは限りませんが、努力すること自体に価値があり、自分自身を成長させることができると思います。君たちは自分の力を発揮して、社会に貢献し、活躍するという使命が期待されています。この使命を本校生一人一人が将来、果たしてほしいと思っています。

・このあとのホームルームで、『熊本高校が目指すもの』というプリントを配付して、担任の先生から説明があると思います。その中には、目指す学校像として、「①教師と生徒が互いに信頼し、生徒が自立して考え行動する学校、②生徒同士で友達から良い点を学び、悪い点は指摘し合える学校、③生徒も教師も、挨拶と掃除に一生懸命に取り組む学校、④部活動や学校行事が盛んで、生徒と教師に感動と笑顔があふれる学校」とプリントに書いてあります。君たちの手で、このような学校になるように努めてほしいと思います。

・今年度がどのような1年間となるのか、1年後君たちがどのようになっているのか、これからの皆さんの健闘を楽しみにして、4月始業式の式辞とします。

 平成二十八年四月八日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度4月入学式校長式辞(平成28年4月8日)


 

式   辞

人も自然も厳しい冬をくぐりぬけ、待ち望んでいた春を迎えることができました。本日ここに、江原会会長 永田求 様をはじめ、多数の御来賓の皆様並びに保護者の皆様の御臨席のもと、「平成二十八年度熊本県立熊本高等学校入学式」を盛大に挙行できますことは、本校職員にとってこの上ない喜びであり、心より御礼申し上げます。

 ただいま、入学を許可いたしました四〇五名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。みなさんの本校への入学を心から歓迎致します。

 本校は、今年で創立百十六年を迎える、歴史と伝統と実績のある学校です。これまでの四万人を超える卒業生の方々は、我が国はもとより、世界的に活躍されています。熊本県内からだけでではなく、全国からも注目をされている高校です。

さて、新入生の皆さんに、次の二つのことを期待します。

まず、一つ目は、「建学の精神」を身に付けて、これからの人生の拠り所にしてほしいということです。本校は、開校以来、野田寛初代校長によって示された建学の精神である「士君子」たるの修養を目標とし、人格の完成を目指しています。「士君子」とは、校訓の中にあるように、「礼節を旨とし、誠実にして謙虚、善をなすために勇に、心身を錬磨し、艱苦に耐えて、日に新たに勉学に努め、有為の人材として大成を期す」と示されています。これは、本校が掲げるスクールアイデンティティーである「深い自己理解のもと、個性を生かし社会に積極的に関わっていく自立した個人」となることが求められています。この建学の精神を備えた人間像を求めて生きていくことを、熊本高校の生徒の一員となった、新入生の皆さんに強く希望します。

二つ目は、これからの時代に求められている力を身に付けてほしいということです。現在、急激な少子高齢化が進行し、グローバル化の進展に伴う国際競争が激化しています。我が国が将来にわたり成長・発展し、一人一人の豊かな人生を実現するためには、新たな価値を創造し国際的に活躍できる人材や、多様な文化と価値観を受容し共生していくことができる人材が求められています。これからの時代は、人と人との繋がりや、人と自然との調和が一層求められます。

皆さんには、国際社会にリーダーシップを発揮する能力と異質な文化に対する柔軟な心を備え、いついかなる時も品位ある態度を堅持することのできる人間となり、自己をしっかりと確立したうえで、国や民族の価値観の違いを越えた地球的な視野を持つことが求められています。これからの本校での三年間は、自主自立を達成するための基礎づくりの期間であると同時に、将来の自己実現に向けて、自己を発見し、自己を理解し、自己を成長させるための期間となることを期待しています。

 

最後になりましたが、保護者の皆様には、お子様の御入学、誠におめでとうございます。

本日からお預かり致します四〇五名の生徒の皆さん一人一人の成長と夢の実現に向けて、そして、「士君子」の育成に、私たち本校教職員は学校の総力を挙げて取り組んで参ります。

どうか、保護者の皆様におかれましては、本校の教育方針を御理解いただきまして、これから始まります本校の教育活動に、御支援と御協力を賜りますようお願い致します。

結びに、夢と希望に満ちた新入生の皆さん一人一人が、これから出会う先生や先輩、同級生から多くのことを学び、本日が「士君子」を目指す始まりの日となることを祈念して、式辞と致します。

 

 平成二十八年四月八日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


熊本地震後の学校再開時の全校集会校長講話(平成28年5月10日(火))


  

 皆さん、おはようございます。今日は雨が降っていますので、放送を通して話をします。校長の和久田です。4月15日からの休校以来25日が過ぎました。本校の生徒と教職員の全員が無事で、今日を迎えることができたことを、何よりも嬉しく思います。

 今回の熊本地震は、同じ地域で震度7が短期間に繰り返し起こるという前例のないものでした。しかも、震源が浅く、直下型で起こる活断層型の地震でした。今回、皆さん一人一人の状況は違っても、みんなが大変怖い思いをしました。被害の程度の差こそあれ、全員が熊本地震の被災者となってしまいました。
 4月14日(木)午後9時26分の「前震」が起こった時には、皆さんは何をしていましたか? 自宅にいた人もいれば、まだ家に帰っていなかった人もいたでしょう。益城町で震度7、M6.5ということでしたが、私はその益城町の総合体育館の中にいました。ドンという縦の衝撃があり、屋外へ逃げようと思うと同時に、天井からパネル板が落ち始めたので、頭を守りながら、やっと外に逃げ出ることができました。その後、余震が途切れた頃合いを見計らって、車の鍵などを入れていた荷物を数人で取りに再び体育館に入りましたが、体育館の中に多くの落下物があり、やっと荷物を取り出すことができました。その後、自宅に電話をしても繋がらず、家族の状況について大変不安な思いをしました。家に帰るまでの道路は段差ができているところもありました。道路沿いの家々のブロック塀などが倒れている中を、ゆっくり用心しながら車を運転して自宅まで帰り、家族も怪我もなく無事であったことが確認できました。皆さんも、大きな恐怖と様々な不安を感じながら、一夜を過ごしたことでしょう。そのような中で、暫くすると、県教委から熊本高校に多くの人が避難してきているとの電話が入り、熊本市から避難所の設置の要請があっているということでしたので、学校へ行き、避難所として体育館を開放しました。それから、教頭先生と事務長先生と一緒に教室などを一通り確認し、朝まで学校に留まりました。テレビで地震の情報を得ながら、翌日の朝6時に休校の連絡をHPに載せました。その後は、余震が弱まるものと思っていましたが、まさか、それが4月16日(土)午前1時25分の本震に繋がるとは思わず、全くの想定外の大きな地震が再び起こりました。本震のM7.3は、前震のM6.5の16倍の強さで、激しい揺れがとても長く続いていたように感じました。

 今回の地震によって、本校の建物はかなりの被害を受けてしまいました。体育館のアリーナの天井の鉄骨が本震によって6本落下しています。文部科学省による文教施設応急危険度判定で、「危険」という判定を受けました。最悪の場合には、沢山の天井の鉄骨が落下してしまう危険性があり、1階の柔道場、剣道場、ビジュアル教室、トレーニング室、モールがすべて使用禁止になってしまいました。それによって、本校の避難所は4月24日で閉鎖となりました。また、43年前に建てられた職員室や理科教室などがある第1棟は、壁に亀裂が入るだけでなく、3階部分は場所によっては壁が壊れ落ちて穴が空いたり、中の鉄筋が湾曲したりしているところもあります。さらに、前震では給水管が損傷して職員室などが水を被り、本震では化学第二教室にあるドラフトチェンバーの配管が壊れて、再度、水を被りました。このような被害によって第1棟も「危険」の判定が下され、2階以上は使用禁止で、1階は生徒立入禁止となっています。そのような中で、教室がある第2棟と第3棟は、耐震構造の効果が大きかったようで、机も動いていないくらいで、被害は殆どありませんでした。県教委の安全確認が終わり、学校再開の許可が出ましたので、今日から登校を再開することができました。ただ、職員室が使えない状況ですので、職員室を第3棟に移し、教室は第2棟にまとめる移動を今日これから行ってもらいます。

 これまでに13日間を休校にしましたので、年度当初の予定を大きく変えなければならないところが出てきています。夏休み後は8月18日に始業式を行い、授業時間を確保していく予定です。学校行事は、できる限り実施する方向で考えています。ただ、体育館が使えませんので、日程の変更や会場の変更をしなければなりません。部活動にも大きな影響が出ますが、みんなの力でこの難局を乗り切りたいと考えています。みんなでアイデアを出して、工夫をして取り組みたいと思っています。変更もやむを得ないところが出てきますが、柔軟に対応して、前に進んでいければと思っています。なお、第1棟が使えない状況となりましたので、仮設校舎の建設も始まる予定です。

 県内でも各地で信じられないくらい、想像できないくらいの甚大な被害がでています。益城町や阿蘇方面では大きな被害が広い範囲にわたっています。熊本県のシンボル的な建物である熊本城にも甚大な被害が出ています。言葉が出ないくらい、痛々しい姿に一変してしましました。中でも、飯田丸五軒櫓の南東の一角は、7個の石垣だけで辛うじて持ちこたえています。復元には10年とも20年とも言われていますが、県民の心の拠り所なので、文化庁も元に戻す方針を掲げて対応すると言ってくれています。

 熊本地震によって、私たちの生活も大変な影響を受けました。衣食住のすべてが大きく変わりました。避難所での生活や車の中での寝泊りを強いられている人がいます。今でも毎日、余震が数回起こっています。電気、水道、ガスが長期間使えませんでした。特に、水の有り難さを痛感しました。不便さにも多少慣れた頃に、ライフラインが復旧し、普通の温かい食事の美味しさが体に沁みました。体を伸ばして、布団に眠れることが幸せなことであると分かりました。家族の存在の大きさと大切さに気づきました。人と人との繋がりの有難さが改めて分かりました。

 大きな被害が出ていますので、皆さんが震災後の生活を受け入れ、熊高生らしく過ごすことができているだろうかと心配していました。4月28日の教科書等の私物を持ち帰るための一時登校日には575人の登校がありました。また、4月30日のテレビ番組で、生徒会長の亀井くんが避難所でのボランティア活動をしている様子が放映されました。とても頼もしく思いました。それぞれが今、できることに取り組んで、今日を迎えていることと思います。私は、このゴールデンウィーク中の3日間、益城町に災害ボランティア活動へ行きました。10人位のグループで民家の瓦礫やブロック塀の片付けをしました。同じグループの中には、大阪から車で来ていて、毎日ハンマーで崩れかかったブロック塀を撤去している3人組の人たちがいました。また、1週間も自家用車で寝泊りしながら、ボランティア活動を続けている山口県の消防士の人もいました。6月末まで飯塚市から土日にハンマーを持参してボランティアに来ると言っている人もいました。県内の高校3年生で野球部の生徒も二人いました。ボランティア活動の受付を待っている「熊本高校弓道部」のジャージを着た本校生も見かけました。

 今、「頑張ろう 熊本」とか、「負けんばい 熊本」、「支え合おう 熊本」という文字を、よく見かけます。熊本全体を励ます意味ですが、私には熊本高校を応援してくれているようにも思えます。「頑張ろう 熊高生」、「負けんばい 熊高生」、「支え合おう 熊高生」。今回、みんなが辛い体験をしました。震災から多くのことを学ばざるを得ませんでした。みんなが、かけがえのない日常の有り難さを知りました。この経験を生かして、これからの人生がこれまで以上にかけがえのない大切なものに変わると信じています。自分にとって大切なものが判り、自分の進路目標が、強いモチベーションによって決まったという人もいるのではないかと思います。この経験を通して、怖いことを乗り越えて、みんなが強くなれたのではないかと思います。レジリエンスという折れない心、しなやかな心を熊高生として今後も発揮してほしいと思っています。今日5月10日が、本校にとって今年度の再出発の日となります。

 最後に、昨年度、避難訓練の時に紹介した熊本県出身の詩人である坂村真民さんの『生きる』という詩を紹介します。
 『生きる』
  生きることの 素晴らしさ
  生きることの 難しさ
  生きることの 美しさ
  任せきって生きることの 喜びに燃えよう
という詩です。

 非日常を一日でも早く、日常に戻したいという思いで、震災以降、学校では準備を進めてきました。
 今、熊高生の力を発揮してほしいと思います。みんなで力を合わせて、励まし合い、支え合いながら、前へ進んでいきましょう。
 これで、学校再開に際しての私からの話を終わります。

 


平成28年度7月終業式校長式辞(平成28年7月20日(水))


 

式   辞 

・みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。

・表彰式では、多くの生徒に表彰状を渡すことができました。夏休み中に全国大会への出場が決定していますのは、全国総合体育大会にボート部の東坂くん、全国総合文化祭に将棋部の水田くん・白井くん・中島くん、囲碁部の上村さん、放送部の今井さん、それからNHK杯全国高校放送コンテストに放送部の前田さん、矢野さん、松本さん、上野さん、田中さん、正木さん、高森くんの合わせて13人です。熊本県の代表として、また、本校の代表として、全国大会で力を発揮して、頑張ってきてほしいと思います。

・さて、今年度の1学期は、極めて特別な学期でした。熊本地震発生後、厳しい状況の下でみんなこれまでよく耐えて、頑張ってくれたと思っています。休校中には、それぞれ自分ができることを自主的に考え、行動してくれました。かなり多くの本校生がボランティア活動に参加したのではないかと思います。ボランティアをしてもらったという所から感謝状がいくつか届きましたので、それぞれ渡しました。それは本校生が行ったボランティアのごく一部であったと思います。

・一方で、住んでいたところが大きな被害に遭ったり、保護者の仕事が厳しい状況に陥ったりした本校生のこともずっと心配しています。まだまだ落ち着くまでにはかなりの時間がかかると思いますが、少しずつでも良い状況に戻っていくことを願っています。また、江原会では、今回新たに熊本地震母校支援基金を立ち上げて、大きな被害を受けた生徒の支援を検討していただいています。「熊本地震のために、自分の将来の夢を諦めないでほしい」との卒業生の思いが義援金として寄せられています。

・熊本地震を経験して、今、大切にしたいキーワードは、「感謝」と「前進」ではないかと私は思っています。大きな被害に遭った人にとって、あの地震さえ起こっていなければ、このように苦しい思いをしなくても良かったのにという気持ちがあると思います。「感謝」するというのは、厳しく容易ではないことだと思います。しかし、このような経験をしたからこそ、命の大切さや日常の有り難さ、人との関わりや家族の絆を実感することができました。いまこのように学校生活を送れていることにも感謝できると思っています。

また、物理的な被害が大きく、元の状態にまで復旧するにはかなり時間がかかります。それまで、何もせずこのまま待っていることはできません。一歩一歩、着実に「前進」していくことが大切だと思っています。体育祭や文化祭などの学校行事も中止をせずに、これまでやっていないような熊高生らしい新たな工夫を考えて、取り組んでください。熊本地震の大きな被害を受けた本校生が、前を向いて進んでいくことが、熊本地震からの復興にも繋がると思います。皆さんの気持ちや頑張りを、形にして前進させてください。

平成二十八年七月二十日 

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度8月始業式校長式辞(平成28年8月18日(木))


 

式   辞 

・みなさん、おはようございます。短い夏休みが終わり、どの学校よりも早い始業式となったのではないかと思います。早く授業が始まることを前向きに捉えて、いいスタートダッシュとなることを期待しています。まだまだ猛暑が続いていますので、プールで始業式を行いうために熱中症予防として、今回はミストシャワーを噴射するスーパーフォグジェッタ―というものを6台設置してみました。

・さて、夏休み中に、それぞれいろいろなことがあったのではないかと思います。先週8月12日には、第60回熊高音楽祭を熊本学園大学ホールで開催することができました。予定していた会場が地震の被害のために使えませんでしたが、別の会場が確保できて、中止をせずに第60回を迎えることができました。600人収容の会場は満員となり、力強い演奏や美しい歌声を聴くことができました。出演した生徒の頑張りだけでなく、当日の運営もスムーズにてきぱきとできて、素晴らしい音楽祭であったと思います。

・それから、8月11日には「花の甲子園」南九州大会が開催され、本校華道部が出場しました。3人一組のチーム戦で、形と大きさの異なる三つの花器に花を活ける技術を競う大会です。本校の松尾さん、岡村さん、河俣くんの3人は、人を感動させる花の力をそれぞれ表現したそうです。その中の一つにヒマワリ3本が中心に真直ぐに活けてあるものがありました。熊本地震の被害を受けても、下を向かずいつも上を向いていこうという3人の強い気持ちを私は感じました。審査の結果、南九州地区代表に本校が選ばれ、13地区の代表が集って11月に京都府で開催される全国大会への出場権を獲得しています。西暦587年に聖徳太子が建立したとされ、生け花の発祥地と言われている京都頂法寺六角堂で行われる「花の甲子園」全国大会でも、熊本地震からの復興に向けた強い思いを込めて、人々を感動させる花の力を表現し、伝えてほしいと思っています。

・また、向日葵と言えば、夏を代表する花ですが、2年生の矢野さんが中心となって、ボランティアで「復興のひまわり」を母校の中学校に種を蒔いたというニュースが6月にテレビで放映されました。矢野さんは、中学校の時に修学旅行で訪れた神戸で、阪神淡路大震災の話を聞き、「復興のヒマワリ」のことを知ったそうです。阪神淡路大震災で「はるか」という名前の少女が亡くなった自宅跡地から向日葵の花が咲き、その種は東日本大震災などの各被災地に送られているそうです。今回、矢野さんは、東日本大震災で被災した福島県南相馬市や2年前の広島土砂災害の被災地で育てられた向日葵の種を取り寄せて、母校の中学校の正門から道路までの約200メートルに種を蒔いたということでした。6月に蒔いた種が今どうなっているだろうかと思い、私は先日、見に行ってきました。もう向日葵の花が咲いていました。「がんばろう熊本!! はるかのひまわり」という立て看板も建てられていました。これから沢山、向日葵が咲き誇ることと思います。

・ところで、学校の校舎や設備の復旧工事も進んでいます。仮設校舎が先週完成しました。後は、荷物を運びこんで使えるように準備しますので、9月上旬には、職員室も移り、仮設校舎での授業が再開できる予定です。なお、仮設校舎の机や椅子は、今年度末で閉校する南関高校から譲り受けたものもあります。本校で使ってもらうために、南関高校の生徒たちが机、椅子を60組運び出す準備をしてくれたそうです。閉校を迎えることになっていますが、机と椅子が熊本高校で使ってもらえたら嬉しいと言ってくれています。感謝して使ってほしいと思います。
 また、図書館の工事も終わりました。図書館が暫く使えずに不便をかけたと思いますが、これから使えますので、大いに活用してください。さらに、グラウンド西側の防球ネットや校舎東側フェンスの工事も進んでいます。8月中には完成予定です。

・最後に、今日HRで「熊本地震で被災された後輩諸君への支援」というプリントが配付されます。江原会の熊本地震災害基金に関するものです。保護者にプリントを渡して、「熊本地震のために、自分の将来の夢を諦めないでほしい」「毎日が元気に送れるように」と考えて支援を申し出ておられる卒業生の思いがあることを伝えてください。

・今日からどの学校よりも長い2学期になります。体育祭、文化祭もあります。それぞれにとって充実した学期となることを期待して、私からの話を終わります。

平成二十八年八月十八日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度12月終業式校長式辞(平成28年12月22日(木):本校屋内プール場)


 

式   辞 

・みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。
今、表彰式を行いましたが、今回は多くの表彰がありました。二学期は部活動では2年生と1年生で活動し、それぞれ成果をあげてくれました。全国大会へ出場したのは、ボート部の東坂くんが岩手国体へ、ESS部の丁くん・椎葉さん・井戸さん・杉本さん・今坂さん・木村さん・周さんが英語ディベート大会で九州大会優勝という昨年からの二連覇を達成して全国大会へ、華道部の松尾さん・岡村さん・河俣くんが南九州大会で代表となり全国大会へ出場しました。
特に、華道部は11月に京都市で行われた「花の甲子園全国大会」で最優秀賞となり、優勝旗を本校にもたらしてくれました。日頃の華道部の練習は、花の活け込みだけでなく、芸術や文学に関する書物を読み込んだり、花の生け方について議論を行ったりしているそうです。そのような活動が、全国大会での高い評価になったと思います。次期家元である池坊専好氏による講評では、「熊本高校の生徒たちは、淡々とした語り口の中にも、圧倒的な存在感と作品力そして、深さがありました。さらに、自分たちのスタイルを貫徹する潔さも見られました。生けられた作品の一つ一つ一本一本に情感が見受けられ、非常に良い、高いレベルの作品だったと思います。」と、絶賛されています。

・さて、熊本地震の被害を被った本校の復旧工事の予定について君たちに伝えておきたいと思います。現在、工事中の進路室と家庭科室は、来年3月末までに完成予定となっています。その後、荷物を搬入し、新しい進路室と家庭科室が使えるのは、4月以降の来年度になりそうです。次に、体育館アリーナについてですが、来年6月から工事が始まり、翌年平成30年の1月中に工事が終わる予定です。3年生の卒業式は県立劇場で式典を行い、学校へ移動して最後のホームルームを教室で行う予定です。まだ、1年間以上アリーナを使うことができませんので、部活動や学校行事で不便な状態が続きますが、辛抱してください。それから、第1棟本館は、来年7月から大規模改修工事に取り掛かり、約1年の工事の見込みになっていますが、今後具体的な工期が決められることになります。1,2年生にとっては、来年度は更に体育館と本館の工事が始まるために、資材置き場や工事事務所の設置に伴って、校内での活動場所が一層狭くなることが予想されます。今よりさらに限られた場所での活動となりますが、厳しい練習環境を工夫しながら取り組んでくださいとしか言えません。

・また、熊本地震後にいろいろな方面から支援をしていただいています。江原会では熊本地震母校支援奨学金・支援金を準備していただき、10月末に58名に支給していただきました。また、昨日行われたトークライブ「士君子」の履歴書は本校卒業生主催の復興イベント企画でした。さらに、江原会以外の支援では、サイゲームスという企業からは、校内の安全環境向上のために防災ソーラー照明灯10台を寄附していただけることになりました。暗いところを照らす照明灯には、非常用としてリチウムバッテリーと非常用コンセントが付いたもので、商品名は「恵の光」というものです。来年1月中に設置工事が行われる予定です。

・ところで、10月末に、英国イートン校のサマースクール事務局長のフィリップ・ハイさんと専任看護師のリン・ハイさん御夫妻が、熊本地震の被害を心配されて、本校を訪問されました。以前来られたことがある体育館の状況を見て、大変衝撃を受けられていました。熊本に3泊されましたので、被害の大きかった益城町を案内し、その後、第二高校と熊本城へ行きました。熊本城の二の丸広場では、模擬試験が終わった本校生徒も数人で熊本城の状況を見に来ていました。今の姿をしっかりと自分の目で見ておきたいと思ったことに、流石は本校生だと感心しました。
また、12月5日には福井県の高校の校長先生が、本校を訪問されました。以前から本校を訪問したいと思っておられたそうで、本校の教育が実際どのように行われているのか自分で見てみたいということで、長年の希望が今回実現したということでした。約3時間の訪問で、学校概要説明や校内案内をしました。その後、その校長先生から私宛にメールをいただきました。「私自身がもう二度と見ることがないかも知れない地震による校舎の状況など、その衝撃は今も鮮明に残っています。その中で、体育の授業の持久走で、走るのが苦手そうな生徒が、辛そうな顔をしながらも校舎の陰の場所でも黙々と走る姿が印象的でした。体育の先生が見ても見ていなくても、辛いことにも辛抱強く取り組む熊髙生の素晴らしさを見た思いです。その後、ご紹介いただいたルートで熊本城へ行き、その様子に息が詰まりました。」と書かれていました。

・さて、12月の終業式は、今年1年の締め括りになります。熊本地震が、強く印象に残っていますが、地震以外にもそれぞれで様々な出来事があったのではないかと思います。
二学期の学校行事である体育祭と文化祭では、君たちから多くの感動と熊高生の逞しさ、力強さを感じることができ、清々しい爽やかさも感じました。それぞれで今年を振り返り、新しい年を迎えてください。
明日から冬休みですが、今年の冬休みは曜日の関係で例年より長くなります。終業式が2日早く、始業式が2日遅い1月10日ですので、合計で4日間長い冬休みです。課外は12月28日まではありますが、これからの冬休みの一日一日を大切に過ごしてほしいと思います。特に3年生にとってはセンター試験まであと23日となりました。「熊高生は、ここから更に成績が伸びる。最後の一日まで伸びる。」と言われています。それは、「最後まで、自分の可能性を信じることができるから」、そして、「一緒に頑張っている沢山の仲間がいるから」だと思います。日に日に近づく本番を前に不安を感じないという人はいないと思いますが、慌てず、焦らず、諦めずに自分の力を信じて頑張り抜けるかどうかが大事です。一日一日を大切に過ごしてください。
それでは、生徒諸君一人一人にとって充実した冬休みとなることを期待して、話を終わります。

平成二十八年十二月二十二日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度 1月始業式校長式辞(平成29年1月10日(火))


 

式   辞 

 ・みなさん、おはようございます。それから、明けましておめでとうございます。プールで始業式、終業式を行うのは、今回で4回目になりました。体育館と違って、君たちの顔を見ながら話すことができませんので、今回は私がプールサイドを歩いて君たちの顔を見ながら始業式の話をしてみようと思います。(演壇から降りて、プールサイドを時計回りに歩き、時に立ち止って話す。)

・まず、君たちはどのように新年を迎えましたか? 私は今年から数年間は熊本城へ行こうと思っています。熊本のシンボルである熊本城が修復されていく姿をこれから20年ぐらい元日に見に行こうと思っています。また、毎年熊本城で「かわらけ」という素焼きの杯が配られますが、それに書かれている文字が例年の「賀正」に代えて、今年は「復興」の文字になっているということでした。さらに、毎年変わるかわらけの文字の色が今年は日本古来の「勝ち色」ということでした。「勝ち色」は、黒に見えるほど濃い紺色で本校のスクールカラーですので、これも何かの御縁ではないかと思って出かけました。かわらけが今年は2017枚配られますが、配付の整理券を受け取るために二の丸広場に並んでいるときに、熊本城本丸の後ろから昇ってくる眩いばかりの初日を見ることができました。

・さて、今年は「熊本地震復興元年」と言われています。「復興」のおこすと読む「興」の字の成り立ちは、四つの手で力を合わせて中央にある上下二つの筒を持ち上げるという会意文字で、そこから「おこす」とか「始める」とか「よろこぶ」を意味する「興」という漢字ができたのだそうです。それが正しい説明ですが、私が「興」の字を見ていてどのように見えたかというと、横棒が表す地面の下に杭を二本打ち込んであって、その地面の上に「同」が表す建物に「口」が表す窓が付いていて、それを両側から地震に耐えるように協力して支えているように見えます。左右対称でどっしりとした漢字という印象です。 如何でしょうか? そのように見えてこないでしょうか? 本校の体育館アリーナと本館第一棟の大規模改修工事も今年の6月以降に始まりますので、本校にとっても今年は当に復興元年です。

・ところで、既に復旧が終了した建造物に初代校長と第三代校長の胸像があります。まず、校門を入って左前方に初代校長 野田寛先生の像があります。像の造りは、地面に土台があり、その上に四角柱が建っていて、更にその上に台座があり、胸像があります。像は四つの部分から造られています。地震後に判ったのですが、実は胸像は台座に載せてあるだけでした。そのために地震によって胸像が台座から大きくズレました。また、全体が土台部分で最大5cm動いていました。そこで、胸像を元に位置に戻して固定し、土台からは移動したまま固定しました。土木関係の専門業者からは、地震で胸像が地面に落ちることがなく、よく持ち堪えたと驚かれたほどです。落ちることがない「不落」の胸像として語り継いでほしいと思っています。3年生が受験する前に見に行ったり、触ったりすると、「落ちない」御利益があるのではないかと思います。
3年生が今週末に受験する大学入試センター試験の時には、最低気温がマイナス1度まで下がり、雪も降るかも知れないという予報です。寒さにも負けずに、これまで蓄えてきた力を発揮してほしいと願っています。頑張ってください。

・また、校門を入って右前方に第三代校長 福田源藏先生の像があります。こちらは、胸像と台座が少し固定されていましたので、重心が高い位置にあるからだと思いますが、全体が土台から大きく動いていました。向きも少し捻じれて、最大で30cm動いており、土台から宙に浮いている部分もあるくらいでした。この像は動いたところで固定して、土台を新たに広く作りました。以前からの長方形の土台に、新たに長方形の土台が重なった6角形の土台となっています。これは熊本地震でも倒れなかった「不倒」の像です。この二つの胸像のところに、これから説明を書いたプレートを設置して、熊本地震が起こったことや本校も被害を受けたことを伝えていくための役割も二人の歴代校長の像に担っていただきたいと思っています。君たちも熊本地震で経験したことや本校の被害を語り継いでいってほしいと思います。二つの胸像は地震で少し動いてはいますが、震災前と同じように正門の方を向いて建っています。本校生が士君子と育っていくことを見守っている不倒不落の像となりました。

・それでは、今年1年が本校にとっても本格的な復興元年となることを祈念し、ここにいる生徒諸君にとって充実した素晴らしい1年となることを期待して、一月始業式の式辞を終わります。

平成二十九年一月十日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


第69回 卒業式校長式辞(平成29年3月1日(水))


 

式  辞


 早春の陽を浴びて本校正門の桜の蕾が膨らみ始め、春の訪れを待っている花や木の命の鼓動が、聞こえてくるような季節となりました。   
 本日ここに県議会、歴代校長、江原会、育友会、県教育委員会などから、多数のご来賓の方々のご臨席を賜り、保護者の皆様のご出席のもと、第六十九回熊本県立熊本高等学校卒業式をこのように盛大に挙行できますことに、心から感謝申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与しました398人の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
 皆さんがこれから出ていく社会は、急激な少子高齢化が進行し、グローバル化の進展に伴う国際競争が激化しています。近年顕著となってきているのは、知識・情報・技術をめぐる変化の早さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会の変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきていることです。とりわけ最近では、IoTにより全てのものがインターネットでつながり、それを通じて収集・蓄積される所謂ビッグデータが構築され、人工知能が判断を下すという第四次産業革命と言われる時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされています。しかし、人工知能がいかに進化しようとも、それが行っているのは与えられた目的の中での処理に過ぎません。私たちには、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え出すことができる未来の創造者となっていくことが期待されています。

 皆さんは、卒業する学年で、熊本地震という未曾有の災害を経験しなければなりませんでした。熊本県の方言に「のさり」という言葉があります。「のさり」とは、自分の意志ではない授かり物を意味しています。人間の意志を超越して、人に幸不幸を与える力で、良いことも悪いことも全部自分にのさった物であるということです。熊本地震を経験したことは、いわば私たちに授けられた共通の運命として、私たちの人生における「のさり」となりました。

 震災直後に白川小学校へ避難し、ボランティア活動をしていた生徒会長の亀井君が「全校生徒へのメッセージ」を作り、学校へ届けてくれました。それを本校のホームページに載せましたので、私たちだけでなく、江原会の方々や全国の学校関係者の目に留まり、多くの方々から感動しましたという反響がありました。そのメッセージの一部分を今一度私から卒業生に伝えたいと思います。
 「一人の被災者として生徒みんなに伝えたいことは、まず一つは、『何よりも自分の命を大切にしてほしいということ』です。日常があることの前提は、生きているということです。生きている限り僕らにできないことはないということです。伝えたいことのもう一つは、『この災害を自らの糧にできる勇気を持ってほしいということ』です。災害を生き延びた私たちの次なる責務は、その大きな犠牲を無駄にしないこと。そして新たな犠牲を生み出さないよう努力することです。」これは、震災という恐怖の中にあったにも係らず、何と力強いメッセージでしょうか。今、読み返してみても、勇気と希望を感じ、胸が熱くなる思いがします。

 ところで、現在、経済同友会代表幹事として経済界を代表する人物である小林善光氏は「危機に立ち向かう覚悟」という著書の中で、次世代へのメッセージとして『宿命に耐え、運命に戯れ、使命に生きる』と言っておられます。生まれながら変えることができない宿命に耐え、のさった運命に対しては、命を運ぶと書くように、自分でコントロールして、この難局を戯れる位の余裕を持って自分の運命を切り拓いてほしいということであり、そのような状況の下で、一人一人の使命に気づき、それを果たしてほしいという意味であると思います。地震を経験した者の使命として、さらに、本校が目標としている士君子の使命として、ノブレスオブリージュの精神で一人一人ができることに責任を果たしていくことではないかと、私は思います。
 本校の教育理念は、「士君子」を育成することにあります。これまでの本校での三年間は、自主自立を達成するための基礎づくりの期間であったと同時に、将来の自己実現に向けて、自己を発見し、自己を理解し、自己を成長させるための期間でした。士君子の理念は社会がいかに変化しようとも、変わることがない不易なものとして、本校卒業後もいつも心に留めて、自分の使命を果たすときの行動の指標にしてください。

 結びに、卒業という人生の節目となる今日、これまで皆さんを育て、支えてくださった保護者をはじめ、震災に関するご支援を戴いた方々への感謝の気持ちを忘れることなく、また、ふるさと熊本を誇りとして、未来を誠実に切り拓いてください。更に、これからも自分の使命を果たすために多くのことを猛烈に学んでほしいと思います。今年度の本校のスローガンである「誠実、感謝、猛勉強」と、学年のスローガンである「Difference」を卒業生の皆さんに餞の言葉として贈り、皆さんのご健康とご活躍を祈念して、式辞と致します。

平成二十九年三月一日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度3月終業式校長式辞(平成29年3月24日(金);熊本高校屋内プール)


 

式  辞


 ・みなさん、おはようございます。終業式にあたり、私から話をさせていただきます。3年生が卒業し、1年生と2年生での終業式を迎えました。今年になって、3年生を送り出すための予餞会と卒業式を県立劇場で行いましたが、どちらも素晴らしい内容であったと思います。予餞会では、各部、各グループの発表を通して1,2年生から3年生の先輩方へ頑張ってほしいという気持ちがしっかり伝わったと思います。

・その甲斐があってか、今年度の3年生の大学合格の状況については、良い結果が沢山出ています。昨日の京都大学後期日程合格発表で結果は出揃いました。今だから言いますが、3年生の過去の模擬試験での状況は、ここ10年間の過去の本校生と比較すると、かなり厳しい状況が続いていました。しかし、大学入試センター試験は例年以上に高得点者が多くなり、大学個別試験でも力を発揮して、合格を勝ち取った生徒が沢山出ています。この要因としては、私は本校生の素直で真剣な努力が合格に繋がったのではないかと思っています。熊本地震という初めて経験する甚大な自然災害に見舞われながらも、諦めずに、必死になって頑張り続けたことが合格に繋がったのではないかと思います。3月4日付の産経新聞に本校を取材した記事が半ページの紙面に掲載されました。その記事の見出しは、『「士君子」震災に負けず』と書かれています。正に今年の卒業生は、『震災に負けず』を体現してくれた生徒たちでした。また、『「士君子」震災に負けず』は、君たち1、2年生にも言えます。今年度は特別な一年間でしたが、厳しい環境の中で、それぞれが自分のやるべきことに向き合って取り組んでくれた、1,2年生の頑張りを称えたいと思います。今後、校舎と体育館の復旧工事が行われます。さらに、進路室と家庭科教室の工事が予定より遅れていて、使えるようになるのは5月の連休以降になりそうです。また、春休み中には教室や廊下の改修工事が行われる予定です。4月以降も復旧工事が続くという厳しい状況は変わりませんが、『「士君子」震災に負けず』の底力を、これからも見せてください。

・ところで、予餞会の中で、3年生担当の先生方による動画がありました。その中で、鏡山先生による逃恥ダンスが披露されました。このテレビ番組名の『逃げるは恥だが、役に立つ』というのは、もともとはハンガリーの諺で、「自分の戦う場所を選べ」という意味だそうです。「自分の土俵で戦え」とか、「短所に目を向けるのではなく、長所を伸ばす努力をしろ」という意味のようです。いろいろな自分にとっての様々な課題に対して、努力して乗り越えるべきものか、今は回避しておくべきものかの判断力が大事だということです。何もかも全てのことから逃げてしまうのではなく、自分の打ち込むものを見つけ、取り組むからには徹底的に努力してそれを克服しなさい、成果を出しなさいということを、『逃げるは恥だが、役に立つ』という諺は意味しています。昨年の創立記念講演会で中西康夫元校長先生が、「姑息な無駄は無駄で終わるが、壮大な無駄は財産となる」という文章を紹介されました。信じること、楽しむこと、全力で取り組むことで、結果は後でついてくるということだと思います。

・さて、明日から2週間の春休みです。今回は4月8日が土曜日で、4月9日が日曜日ですので、例年よりも2日間長い16日間の春休みになります。また、始業式は4月10日の月曜日に県立劇場で行います。午前中に新任式と始業式を行い、午後は新入生の入学式となります。

・明日からの春休みが、今年度を振り返り、次年度を充実させるための一人一人の目標を設定する期間となることを期待して、私からの話を終わります。

平成二十九年三月二十四日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成29年度4月始業式校長式辞(平成29年4月10日(月);熊本県立劇場)


 

・みなさん、おはようございます。平成29年度4月の始業式にあたり、私から話をさせていただきます。春休み中の3月末には、K.S.O.部第8回定期演奏会と第12回吹奏楽部定期演奏会がありました。どちらも素晴らしい演奏と楽しい演出で、吹奏楽部とK.S.O.部で頑張っている生徒たちの姿を見てもらうことができました。吹奏楽部の演奏会が終わってから、「久しぶりに感動しました」と私に声をかけて来られた方がおられました。また、K.S.O部顧問の桐田先生宛に手紙が届き、私も読ませて頂きましたので、一部を紹介します。「夫が車椅子を使っているので、座席のことを受付で尋ねたところ、直ぐに一番前の席を用意していただき、ありがとうございました。演奏がとても素晴らしく、また放送部の方の一生懸命な曲紹介が初々しく、有り難い時間でした。客席を巻き込んで、いろいろなアイデアを出され、くすっと笑ったり仄々したり、帰りは雨が降っていましたが、夫の車椅子をニコニコ押しながら帰りました。また、いつか美しい曲や雄大な曲を聴きたいと思っています。(熊高生の)素晴らしい高校生活に拍手を送ります。」という内容でした。

・春休みが昨日で終わり、いよいよ新しい年度が始まります。皆さん一人一人が今年度にかける意気込みをもって、今日の始業式を迎えていることと思います。

・さて、今週は、「熊本地震復興祈念ウィーク」と言われています。本校でも熊本地震を忘れることなく、防災や減災に努めなければならないと思っています。本校の初代校長の野田寛先生と第3代校長の福田源蔵先生の胸像は、熊本地震でも倒れずに、落下せずに、激震に耐えた胸像として、後世に伝えたいとの思いから、熊本地震についての説明を記したプレートを胸像の近くに設置しました。(まだ、見ていない人は、この機会に見ておいてほしいと思います。)

・熊本地震の復旧工事が、今年度も続きます。進路室、家庭科室、体育館アリーナ、管理棟、図書館などの工事が進められます。現時点で最も不便なところが仮設校舎から体育館への移動ではないかと思っています。段差があり、テントは張ってありますが、雨が降るときは仮設校舎とテントの隙間があるため、濡れなければ行き来ができません。さらに今後、元の2階に戻る進路室や家庭科室へ行くときにも外階段では、雨の日は濡れてしまいます。

・ところで、皆さんは、建築家の安藤忠雄さんのことを知っていますか? 大阪市の生まれで、76歳になられる方です。高校を卒業して建築設計事務所でアルバイトをしながら、独学で建築士試験に合格されました。木工家具を作って得た資金で、世界中の建築を見てやろうと考えて、24歳の時から4年間に亘ってアメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの諸国を放浪の旅に出られています。帰国後、28歳の時に大阪に安藤忠雄建築研究所を設立し、個人住宅を多く手掛けられました。その中の一つで大阪市住吉区の長屋を立て直しています。間口が2間(約3m60cm)で、奥行8間の空間を切り取り、2階建てのコンクリート住宅に建て替えています。下町の風景の中に、周囲を壁で囲んだコンクリートの箱の家は、多方面に衝撃を与えました。その建物は今も色褪せていないそうです。1階と2階をそれぞれ3等分し、真ん中に生活導線を断ち切る中庭空間が配置されています。1階は玄関から続くリビングがあって、中央部分は中庭で、その奥がキッチンとバストイレになっていて、2階は寝室があって、真ん中は屋根がなく階段になっていて、その奥が二つ目の寝室となっています。2階の寝室から、トイレに行くためには、手摺のない階段を雨の日には傘をさして降りなければならない構造です。限られた敷地と予算の中で、建蔽率などの諸条件をクリアしながら風通しや採光を確保し、豊かな空間を作り上げるために無難な便利さを犠牲にした作りと言われています。自然の優しさや厳しさを肌で感じながら四季を過ごしてほしいという、住まいに対する思いをデフォルメしたものと言われています。雨が降れば濡れることは当たり前で、自然の優しさや厳しさを日常の生活の感じることを優先する考えに私は驚きました。
安藤忠雄氏は、阪神・淡路大震災と東日本大震災の復興にも深く関わっておられ、復興構想会議の議長代理を務めておられます。被災した子供たちへのメッセージとして、「希望は誰かが与えてくれるものではない。自分の心の中で作るものだ。自分の心の中に希望を作り、諦めずに生きてほしい」と伝えられています。

・次に、本年度のことについて話をしたいと思います。創立117年目を迎える今年度も昨年度に引き続き、「誠実、感謝、猛勉強(猛練習)」を平成29年度のスローガンとします。
校訓の冒頭に「誠実心」が挙げられていますが、「誠実」であることは、士君子になるための必要条件であると私は思っています。自分自身の言動が、誠実であるかどうか常に自分自身で確認してほしいと思っています。
二点目の「感謝」については、感謝できるということはその状況をプラス思考で前向きに受け止められるということですし、平穏であることの有難さを感じることも感謝の気持ちにも繋がります。
最後の「猛勉強(猛練習)」については、限られた時間をいかに大事に使うかということです。取り組むことには全力を尽くして徹底的に集中して取り組み、何とか成果が表れるまでにしてほしいと思います。

・このあとのホームルームで、『熊本高校が目指すもの』というプリントを配付して、担任の先生から説明があると思います。その中には、目指す学校像として、「①教師と生徒が互いに信頼し、生徒が自立して考え行動する学校、②生徒同士で友達から良い点を学び、悪い点は指摘し合える学校、③生徒も教師も、挨拶と掃除に一生懸命に取り組む学校、④部活動や学校行事が盛んで、生徒と教師に感動と笑顔があふれる学校」と書いています。君たちの力で、このような学校になるように努めてほしいと思います。

・今年度がどのような1年間となるのか、1年後君たちがどのようになっているのか、これからの皆さんの健闘を楽しみにして、平成29年度4月始業式の式辞とします。


平成二十九年四月十日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


平成28年度4月入学式校長式辞(平成29年4月10日(月);熊本県立劇場)


 

式  辞

春の陽光が天地に満ち溢れ、本校正門の桜は今が満開の見ごろを迎えました。
本日ここに、江原会会長 永田求 様をはじめ、多数の御来賓の皆様並びに保護者の皆様の御臨席のもと、「平成二十九年度熊本県立熊本高等学校入学式」をここ熊本県立劇場にて盛大に挙行できますことは、本校職員にとってこの上ない喜びであります。

ただいま、入学を許可いたしました四〇四人の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校への入学を心から歓迎致します。皆さんは、熊本地震を乗り越えて、本校入学という目標を達成されました。これまでの努力に敬意を表します。

本校は、今年で創立百十七年を迎える、歴史と伝統と実績のある学校です。これまでの四万人を超える卒業生の方々は、我が国はもとより、世界的に活躍されておられ、県内からだけではなく、全国からも注目をされている高校です。

さて、新入生の皆さんに、次の二つのことを期待します。
まず、一つ目は、「建学の精神」を知り、それを生涯ずっと目標にした生活を送ってほしいということです。本校は、開校以来、野田寛 初代校長によって示された建学の精神である「士君子」たるの修養を目標とし、人格の完成を目指しています。「士君子」とは、校訓の中にあるように、「礼節を旨とし、誠実にして謙虚、善をなすために勇に、心身を錬磨し、艱苦に耐えて、日に新たに勉学に努め、有為の人材として大成を期す」と示されています。また、「日に新た」の文言について野田寛 初代校長が書かれた掛軸もあります。そこに書かれている言葉は、「君子の学は必ず日に新たにして、日に新たなる者は必ず日に進むなり。日に新たならざる者は必ず日に退き、未だ進まずして退かざる者は有らざるなり。」と書かれています。「今日は苦悩や悲しみに傷ついても、そこでへこたれずに耐えて、明日を迎える。そこに新しい一日が始まり、その一日を全力で頑張ることで、そこから新たなる希望や活力が湧いてくるに違いない。」という思いが込められた、大変力強い言葉であると私は思います。このような建学の精神を備えた人間像を求めて生きていくことを、熊本高校の生徒の一員となった、新入生の皆さんに強く希望します。

二つ目は、これからの時代に求められている力を身に付けてほしいということです。現在、急激な少子高齢化が進行し、グローバル化の進展に伴う国際競争が激化しています。とりわけ最近では、IoTによりすべてのものがインターネットでつながり、それを通して収集・蓄積される所謂ビックデータが構築され、人工知能が判断を下すという第四次産業革命と言われる時代の到来が、社会や生活を大きく変えようとしています。これからの時代では、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を作っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという課題に対して自分の答えを出すことのできる未来の創造者になっていくことが求められています。
皆さんには、国際社会にリーダーシップを発揮する能力と異質な文化に対する柔軟な心を備え、いついかなる時にも品位ある態度を堅持することのできる人間となり、自己をしっかりと確立したうえで、国や民族の価値観の違いを越えた地球的な視野を持ち、平和な生活を安心して送ることができる世界の構築に、一人一人の立場で努めることが求められています。これからの本校での三年間が、自主自立を達成するための基礎づくりの期間であると同時に、将来の自己実現に向けて、自己を発見し、自己を理解し、自己を成長させるための期間となることを期待しています。

最後になりましたが、保護者の皆様には、お子様の御入学、誠におめでとうございます。本校での三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、時には悩みや葛藤が最も大きい時期にもなると思います。本日からお預かり致します四〇四人の生徒の皆さん一人一人の成長と夢の実現に向けて、そして、「士君子」の養成に向けて、私たち本校教職員は学校の総力を挙げて取り組んで参ります。
どうか、保護者の皆様におかれましては、本校の教育方針を御理解いただきまして、これから始まります本校の教育活動に、御支援と御協力を賜りますようお願い致します。

結びに、夢と希望に満ちた新入生の皆さん一人一人が、これから出会う先生や先輩、同級生から多くのことを学び、本日が「士君子」を目指す始まりの日となることを祈念して、式辞と致します。

平成二十九年四月十日

 熊本県立熊本高等学校長 和久田恭生


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