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蝉が五月蝿く鳴いている。
暑さのせいか頭が痛い。正午を過ぎて、この木の下の影も随分狭くなってしまったようだ。
つう、と少し赤くなった頬を汗が流れる。校庭を見れば、楽しそうに遊んでいた「彼」も、校舎へと帰ってしまった後。


…明日は、きっと明日こそは、
この想いを、伝えよう。






7,days

梅花







1stday

誰かが、僕を呼んでいる。
「……てば、おい、……、………って…」
耳につく声だ。まるで僕をこの楽園から引きずり落とそうとしているような。
「…鳴ってるってば、起きろって……」
何を言われても、僕はこの心地よさを捨てるわけにはいかない。もう一度意識を深く沈め、楽園へと舞い戻ろうとすると、
―――鋭い痛みが腹を貫いた。
「…だから、起きろっつーてんだろ、御里!チャイム鳴ってんだよ、昼休みというお前のパラダイスタイムはすでに終わったんだってば!」
目をあけると、自分が学校の屋上にいること、また先程の痛みは腹部への強力なローキックによるものだということが理解できた。
「もっとソフトに起こしてほしいのですが、カナタさん」
体を起こしながら、目の前に仁王立ちしている少女を見上げる。
「努力はしたつもりだ、てか、起きないお前も悪いと思う」
「だからと言ってすぐ暴力に訴える方が悪、…ぶふぉっ!!」
言葉を遮るように、鳩尾にストレートが入ってきた。
「もう一度旅立ちたいなら素直にそう言ってみろ……この瀬尋カナタ様が送り届けてやる」
「すみません遠慮しときます」
純粋に身の危険を感じた僕はこの場から離脱することを試みた。だがすぐに襟首をカナタに掴まれ、身動きが取れなくなる。
「待て待て待て。可憐な乙女を置いていくとはデリカシーのないやつめ」
「どこがどう可憐なのか教えてほしいよ」
「別にただお前を起こしにきたんじゃない。ちょっと用があってな」
そういうとカナタは、スカートのポケットから小さな黒い紙を取り出し僕の目の前に突き付けた。
「……これって、」
酷く愉快そうに笑って、カナタが告げた言葉。
召集令状、だよ。魔女の野郎からのな。」






ああ。
そろそろこの現実らくえんとも、オサラバする時みたいだ。






2ndday

朝だというのに、肌に纏わりつくような暑さ。
窓を開けているのに、入ってくるのは五月蝿い蝉の声と熱気と化した風ばかり。
本当に、今日はついてないなと私は溜め息をついた。
「どーしたんだよ、園田」
隣の席の川野が声をかけてきた。彼は根っからの学級委員体質なのか、クラスメイトの様子に敏感である。
「いや、別に……」
「そーか?あ、それなら、ちょっと頼みたいことがあるんだけど。」
「はあ…何?」
さりげなくちゃっかりした奴だなと思いつつ、断る理由もなかったので、渋々引き受けることにした。
「この前転校してきた、ほら、篠芽カノンさん。あの子のことなんだけどさ。最近教室で姿見かけないから、どうしたのかなって…園田は篠芽さんと仲良いみたいだから、何か知ってるんじゃないかと…。」
「仲良いといわれても……。」
確かに彼女が転校してきたばかりのころ、席が近かったこともあるのか彼女は私によく話しかけてきていた。そんな状態が続き、今ではクラスの中でも私が彼女の「一番の友達」として認識されているみたいなのだが。
「休み時間とかに話したり、一緒にご飯食べたりするけどさ、そんなお互いの行動とか把握するような仲ではないというか、何というか…」
「何か薄情だな…まぁみんなそんなもんだよな、普通。でもさ、些細なことでも良いから篠芽さんがいそうな場所とか、思いつくところがあったら教えてくれよな」
「うん、了解」
じゃ、俺職員室行ってくるわ、と川野が教室を出て行った。
私は彼の言ったように、彼女がこの学校で行きそうなところを考えてみた。が、やはりいまいち思いつくことが出来なかった。
「カノンちゃんが行きそうな所かぁ……あ」
ふと、前に彼女が話していたある場所のことを思い出す。
もしかしたら、と思い私は(川野には内緒で)後で行ってみようと決めた。
ちょうど、チャイムが鳴り始めた時だった。






この学校は空から見るとコの字型になっている。コの字の開いたところに校庭があって、その周りを囲むように、やりすぎじゃないかと思うくらい木が植えられている(校内緑化のためらしいが)。
その中に一本、周りとは大きさも貫録もまるっきり違う桜の木がある。何でもこの学校が創立されたときに植えられたそうで、別名『住原桜』とも言う(これも入学式のとき聞かされたことだ)。
2時間目が終わり、私は急いでその木の所に向かった。木の下はちょうど日陰になっていたが、私はそこに座っている人影を見つけた。
「いた。……カノンちゃん!」
呼びかけると彼女は私の方を向いて、何が起こったのかわからないような表情をした。
「あれ、ヒナコちゃん?どうしたの、そんなに慌てて…」
「どうしたのって…。最近カノンちゃんが教室来ないからって、川野くんも心配してたし、あと私も心配してたんだよ」
「えっ、そうだったの?……ご、ごめんね」
戸惑いつつ彼女は謝ってきた。少し天然なところもある彼女だが、やっと状況を飲み込んだようだ。
「あ、いや、そんな謝らなくても……それで、どうしてここにいたの?
もしかして、なんか嫌なことがあったとか?」
私がそう言うと、彼女は困ったように言葉を濁した。
「ううん、違うの。そうじゃなくてね………」
何だろう。彼女はどこか嬉しそうな様子だった。どうやら、悲しいことがあって逃げ出している、という訳ではないらしい。
「あのね、ヒナコちゃん。わたし、じつは好きな人がいてね…。今度、こ、告白しようと思ってるの…!」
「え、ええっ!そうだったの!?」
本当に予想外な答えが返ってきた。今までにそんな話、彼女からも聞いたことがない。
「…だって、何か恥ずかしくって。ヒナコちゃんにも言おう言おうって思ってたんだけどなかなか言い出せなくて…。それに、教室にいると「彼」のことが気になっちゃうから、どうしようもなくなっちゃって、だからここで1日過ごすようになったの。」
何とまぁ、見事に恋の病にかかっちゃったんだんだなと話を聞きながら思った。しかも相手は私たちと同じクラスにいるらしい。
これは、ある意味重大な問題だ。きっと彼女はその「彼」に想いを伝えるまで、ずっとここにいるつもりなのだろう。
そういえば、前に彼女はこの木が好きと言っていたが、その理由もひょっとしたら。
「ここからだと、校庭がよく見えるの。時々、「彼」の様子も見えるから……」
…やはり、重症のようだ。こうなると、私が言ったくらいでは止められない。
それに、彼女はクオーターということもあり端正な顔立ちをしていて、どちらかというと告白されるようなタイプである。性格だって、私よりも良いんじゃないだろうか。
たぶん、成功するだろうな、と私は思った。
「…カノンちゃんが決めたことなら、私は別にいいと思う。きっと大丈夫だよ。うん。勇気出して、ね
だからさ、教室にもたまには顔出すようにしたら、どうかな…?」
「あ、ありがとう!ヒナコちゃん!わたしがんばってみる。あと、…うん、教室にもちゃんと行くようにするね」
それは良かった。これでなんとか、一件落着かなぁ、と私が思っていると、彼女ははしゃいだ様子で話を続けた。
「あ、それでね、ヒナコちゃんにもちょっと頼みたいことがあるんだけど……」
本日二回目の「頼み事」に、私はやっぱりついてないのかもしれないと、心の中でこっそり思った。






3rdday

六ツ野森高校、東校舎第三棟第三階廊下。
理科室と物置同然の教室だけが集まったこの校舎には、用がない限り普段から生徒たちもあまり近寄らないため、どこか異様な雰囲気が漂っていた。
しかしその日は、何とも奇妙な組合せの2人が此処に来ていたのだった。
「ったく。御里がトロトロしてるから…。てかアイツもアイツだよ、人を呼び出しておきながらその日自分はちゃっかり帰ってんじゃねーか」
ぶつぶつ愚痴を呟く1人は、長い黒髪に着崩した制服、そして左目にはガーゼ製の安っぽい眼帯をした、どこかアンバランスな風貌の小柄な女子生徒だった。
「あんまり苛々してるとよくないよ、カナタさん…って、うわっ!」
「だから、誰の所為だと思ってんだぁ!」
危うくその少女、カナタの繰り出すストレートを避けバランスを崩しかけたもう1人、御里は、彼女とは対照的に一見するとごく普通の外見をした男子生徒で、何故少女と行動を共にしているのかが不思議に思えるほどであった。
「ちっ、今のを避けるとは…御里、お前も成長したなぁ」
「まったく、カナタさんのおかげかも「何か言ったか」
「いえ何も。言ってないです……」
「………まぁ、許す。それより、御里は『魔女』に会うのは初めてだよな?」
カナタが口にした言葉を聞いて、一瞬御里の表情は固まった。
「話には聞いてるけどね。実際に『召集』されたのは今回が初めてだし、そういうことになると思う」
「なるほどな、そりゃいいかもなぁ」
カナタは悪戯めいた表情で、目的地の理科室の前で立ち止まった。
そのドアに御里が緊張した面持ちで手を掛け、開けようとする。
「気をつけろよ、魔女はあたしの何倍もやばい奴だからな。何故ならあいつは――」
ガラガラと、ドアを開けた先に広がっていたのは、

一面、ファンシーなぬいぐるみだらけであった。

「ああ、ああ、あああ~もういいですねぇこの形!猫というだけでも素晴らしすぎるのそれにあえてダルマとしての機能性、丸さを追加してしまうだなんて…ほんと私を悶え殺すつもりですかこの『ネコダルマ』は!……はっ!でもこちらの『キューティーハムちゃん』も捨てがたいんですよねぇ………何よりだっこしたときのフィット感がたまらないですからねぇ……」

「何故ならアイツは、変態だからな」
静かに、カナタがつぶやいた言葉は、ドアの前で固まった御里には届いていなかったのだった。






{Anti}1stday

日が、沈みそうだ。それなのに、相変わらず蝉は五月蝿く鳴いている。
うだるような昼間の暑さもすっかりなくなり、今はただ日暮れ前の冷たい空気が、世界を包み込んでいるようだった。
もうすぐ、この木陰も周りと同じ闇に溶け込んでしまうのだろう。
それでも、少女は其処にいた。
少女は大きな幹の前にしゃがみ、ぶつぶつと呪文のように何か呟いていた。呟きながら木の根元に穴を掘り、何かを埋めようとしていた。
暫くして、少女は穴の中にそれらを詰め込み、満足そうに笑った。
そうだ、これでいい。
本番も、こんなふうにすればいい。
「彼」もきっと、こんなふうになってくれる。

少女は詰め込んだものをもう一度見つめた。
それらは、大きさも種類もばらばらのぬいぐるみだった。
ただ、首や腹の部分の布を裂かれ、そこから派手に綿が飛び出ているだけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の。






少女の、練習台だった。






3rdday{another}

「…やれやれ。まったくあなた達はタイミングというものが、わかんないんですかねぇ!せっかく人が至福の時間を過ごしているときに邪魔するなんて……この人でなしー!」
「うるさいんだよ!何ガキみたいな事で怒ってんだ、この変態が!…第一、呼び出したのはオマエじゃねーか。忘れたのか!」
「変態とは何ですか、失礼な!…カナタ君、貴女はもう少し立場をわきまえた方がいいんじゃないですか?」
…何なんだろう、と心から僕は思った。
たしか、今日はカナタと一緒に『魔女』に呼び出されたため、此処に来ていたはずなんだが。
まず、この部屋はなんだ。
部屋中大小様々な形と種類のぬいぐるみが所狭しと置かれている。その所為かある意味ここが異様な空間だということがはっきり示されていた。
しかしそれ以上に、何よりも僕を戸惑わせたのは、先程まで目の前でカナタと口論していた人物だった。
「あのぉ…カナタさん。ひょっとして、この人が、」
「そぉですよー。“世界の総てを見知る者”ことこの私こそが!…」
「その通りだ、御里。このうさんくさい変態こそが、あたしらを招集した張本人、通称『魔女』だよ」
「また失礼な!せっかく私が御里君の前で格好良く決めようとしたのに…結構傷つきましたよぉ……」
「は、はぁ。」
僕が答えに困っている隣で、カナタが突然静かな声で話し始めた。
「さて、魔女さんよ、そろそろ本題に入ってほしいんだけどな。と、言ってもだいたい予想はつくんだけど。」
「……おやおや、それなら話は早い」
そう言って魔女が微笑む。何故か、先程までとは空気が変わったように感じた。

「ひとり、ルールを破ったものがいましてね。ソレはどうやら私たちと同じみたいで」
「…へぇ、厄介だそりゃ。普通の奴ならまだ修正が効くけど、あたしたちと同じ、なら、出来ねーんじゃないの?なんせ、あちら側・・・・にいないんだから」
「まぁ、普通ならそういうことになりますねぇ。いつものやり方だと、こちら側・・・・にも大きな影響が出ちゃいますし。
だから、今回は「彼」も呼んだんですよ?カナタ君。」
魔女は振り向いて僕の方を見ながら話を続けた。
「ヒトが心の中に本音と建前を持つように、世界にもまた本音と建前が在る」
「全く同じ時間軸、空間軸、存在を内包している2つの世界。鏡写しのような世界。ただ異なるのは、その役割、とでも言いましょうか」
カナタが付け加えるように言う。
「こちら側とあちら側では、根本がまるっきり違う。世界を支配する理が違う。だからこそ、こちらの存在もあちらの存在も、そのまま在り続けることが出来るって訳だよ」
「互いに最小限の影響のみで、ね。通常のままならば・・・・・・・・。」
「あちらとこちらが強く結びつくことで、簡単にその均衡は崩れます。特に此処ではそれが起こりやすいんですよねぇ、仕方ないのですが。」
魔女の言葉に、一瞬カナタが複雑そうな顔をした。
「…だから、あたしたちが、それを断ち切らなくちゃなんないんだ。どんな思い・・・・・をしてでも。」
そう言ってカナタは自分の左眼を、眼帯の上から静かに押さえた。
「カナタ……」
僕が何か言おうとする前に、魔女がパンと手を叩き会話を遮る。
「はいはーい。長話もそれくらいにして。そろそろ行っていただきましょうか。
…あと今回は先程言った通り、頑張ってもらうのは貴方のほうですからね、御里君」
不思議と楽しそうな様子で魔女が言った。
「オマエ…ほんと性格悪いよな……」
いつもの調子に戻ったらしいカナタが呟いた言葉に、魔女は微笑みながら答えた。


「そう。御里ユウ君。貴女は「例外」の「例外」。私や、カナタ君とも違う、本当にこの世界で独りぼっちなんですから
思う存分、誰にでも罰を与えていいんですよ?」






{Anti}2ndday

私は急いでいた。あの時と同じように。
きっとまだ、あそこに行けばあの子がいるはずだ。そして待っているのだろう、「彼」を。
だから、止めなくちゃ、ならなかった。
それは私しか出来ないから、私がやらなくちゃいけなかったから。
だから、こうすればいいんだ。
こうすれば、きっと……

「そんなことしても、あなたが望むようにはならないんじゃないですか?」
知らない声に、驚いて前を見る。木の下に立っていたのは、彼女でも、「彼」でもない、見知らぬ男子生徒だった。
「まったく、まさか紛れ込んでたのはコッチのほうだったとはねぇ。つくづく紛らわしいことだな、今回は」
よく見るともう一人、左目に眼帯を付けた女子生徒がいる。
「……だれ、あなたたち」
湧き上がってくる恐怖とも怒りともつかない感情を、必死で押し殺しながら、私はその2人に問いかけた。だが、彼らは答えず黙ったまま、私を見つめていた。
――いや、私を見ているのに、もっと遠くの、別の何かを見ているような。
「へぇ、まだ正気は保ってんだ。なら、まだ話くらいは出来んじゃねーか?……理解できるかどうかは別としてさぁ」
そう言って女が笑う。
「正気って…私は初めからおかしくなんてなってない。それに、本当に危なかったのはあの子のほうじゃない!…だから、私が…」
「止めようとした、ってことですか?」
怖いぐらいに落ち着いた声で、男のほうが呟いた。

……そうだ、それの一体何が悪いというのだ。
だいたい、この人たちは私があの日何を見たかも知らない。あの日、私が見た篠芽カノンのあんな姿・・・・・・・・・・・・・・も。

もし、私が彼女を止めなかったら、きっと…

――「あのね、ヒナコちゃん。」
「その、川野くんなんだ。好きな人って。」
「転校したてのころ、すごく親切にしてくれて、わたし嬉しかったんだ」
「それでね、ヒナコちゃんに頼みたいことがあるの」
「やっぱり、勇気が出なくて……だから1個だけ、手伝ってほしいの」

「明日の放課後、川野くんをここに連れてきてくれない…?」――
「確かに、あのままなら、篠芽カノンは貴方の予測するような行動を取っていたかもしれない
でも、実際は、そうじゃなかったんです」
「どういうこと?実際は、って…」
予想外なことを言われ、戸惑う私に女が言葉を続けた。
「あの後、お前が言われたとおり川野って奴を連れてきておけば、篠芽っつー女は普通に告白して、即OKもらって付き合うことになってたんだよ。いわゆるハッピーエンド、みたいな感じだな。
…だが、オマエが思い込みで余計なことをした所為で、そうはいかなくなった。
こっち側での役割を果たせなくなった分、篠芽カノンはおそらく現実でやらかしちまうだろうな。…オマエが避けようとした最悪の事態を」
「そんな……」
信じることが出来なかった。この女、いやこの2人が言っていることはまるで、私が何か歯車を狂わせたかのようではないか。私はただ、あんな事が起こってはいけないと思っただけだ。
怖かっただけだ。
なのに、
「貴方がこちら側に紛れ込んでしまって、見てしまったのも、全部偶然です。
でも、こっちにはこっちの、こちら側の世界の役割があります。そして、それはちゃんと機能している。
あなたのように、ルールを破ってしまうことのない限りは……」
風が強くなった。私は立っていられなくなり、その場に座り込んだ。
「私を……どうするの………?」
「どうかしたいところだけど、残念ながらあたしにはできないんだよなぁ。
オマエも、「例外」だから。」
「れい、がい……?」
目の前にいるはずなのに、遠くから声が聞こえるようだ。なんだか体も重い。
男が、申し訳なさそうな表情で、それでも静かに告げた最後の言葉。
「一度ルールが破られれば、元に戻ることはない…だから、こうするしかないんです。………本当に、ごめんなさい」

その瞬間。
世界が歪んだ。
「あなたは、きっと、ついてなかっただけだから」

―ブツッ―






「本当に、これでよかったのかな、カナタ」
「自分で言っといてなんだそりゃ……よかったも何も、こーするしかないんだからさぁ。
…これで、園田ヒナコは世界に組み込まれた。もうルールを破ることもないし、篠芽カノンも現実では通常通りの行動をとる、
ただ代償として、」
「あの子…園田さんは現実で「進めない」存在になった、って事ですか」
「ああ。あいつはずっと、あの時間、空間の中に留まる。そして、そこの均衡を保ち続ける役割を担うことになる」
「役割、ですか。…きっと彼女はそんなこと望んでいなかったのに……」
「……それが罰ってやつだよ。
それに、あいつは止めたかったんだろ?自分の世界が滅茶苦茶にならないために。
なら、よっぽど、おあつらえむきなんじゃねーの?」






7,day

2時間目が終わり、私は急いでその木の所に向かった。木の下はちょうど日陰になっていたが、私はそこに座っている人影を見つけた。
「いた。……カノンちゃん!」
「あれ、ヒナコちゃん?どうしたの、そんなに慌てて…」
「どうしたのって…。最近カノンちゃんが教室来ないからって、川野くんも心配してたし、あと私も心配してたんだよ」
「えっ、そうだったの?……ご、ごめんね」
「あ、いや、そんな謝らなくても……それで、どうしてここにいたの?
もしかして、なんか嫌なことがあったとか?」
私がそう言うと、彼女は困ったように言葉を濁した。
「ううん、違うの。そうじゃなくてね………」
「あのね、ヒナコちゃん。わたし、じつはね…」

<END>



 


<あとがき> はじめまして。「梅花」と書いて「もいか」と読むそうです。モイモイ。

書いているうちに自分でも何かよくわからなくなってきたこの小説ですが、最後まで読んでくださった勇者な方々……。ほんとうにありがとうございます。泣いて喜びます

このような場で小説を書くこと、ましてや創作というもの自体ほぼ初めての経験だったので…。
なんとも拙い作品になってしまいました
言い訳すると、まぁ、「絵のない漫画」的な感じに…会話文が異常に多いのは仕様です。ハイ…(汗)

あと今回終わり方がアレですが、もしかしたらこの話は漫研のHPとかで続くかもしれないです…
一応今回で完全に終わってはないので。
そのときはぜひともよろしくです。
2009,9,15梅花

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